お尻をほぐす4つの「中殿筋ストレッチ」で腰痛改善&ヒップアップ!
「中殿筋」とは、お尻の外側にある三角の筋肉。腰痛があると、この筋肉が硬くなっていることが多く、セルフケアでほぐすことが大切です。健康運動指導士が、美尻効果も期待できる中殿筋のストレッチやエクササイズを紹介します。
目次
中臀筋とは?
普段あまり意識することはありませんが、私たちが生活を送る中で、お尻の筋肉はとても重要な働きをしています。中でも注目したいのは「中殿筋(ちゅうでんきん)」です。
中殿筋とは、お尻の外側にある三角形の筋肉。腰骨の一番高い所から、5~10㎝下がったところにあります。
お尻の筋肉の中で一番大きな筋肉は「大殿筋(だいでんきん)」と呼ばれ、体の表面の表層部にあります。大殿筋が一番表層にあり、その奥に中殿筋、さらにその奥に小臀筋という筋肉があります。中殿筋は、大部分が大臀筋の奥に隠れているので、自分で触るのはむずしいかもしれません。
中殿筋を確認するには、立った姿勢で片脚を持ち上げ、その脚を横に開きます。この動きで、お尻の外側の筋肉が“キュッ”と縮む感覚があれば、それが中殿筋です。
中臀筋の働きは?
中臀筋の主な働きは、脚を外側に開くことです。それに加え、股関節の動きのサポートもしています。
また、歩いたり走ったりする動作の中で、片足だけに力がかかるときに体を安定させる役割もあります。そのため中臀筋が弱くなると、体が安定せずに歩くときにフラつく原因にもなります。
中臀筋の柔軟性をチェック!
まずは自分の中殿筋が硬いのか柔らかいのかを確認してみましょう。自宅で簡単にできる、柔軟性のチェック方法をご紹介します。
【やり方】
- 脚を前に伸ばして床に座る。脚の間はこぶし一つ分のスペースを作る。上半身をやや後ろに傾け、肩の下にひじがくる位置で手を床につける。
- 右ひざを90度に曲げて立て、ゆっくりと左側へ倒す。このとき、右の足裏は床につける。1に戻り、反対側も同様に行う。
2で、右ひざが左ひざの外側まで楽に倒せない場合は、中臀筋が硬くなっている可能性があります。左右差があることが多いので、左右どちらもチェックしてみましょう。片方の中殿筋が硬いと感じたら、硬い方のストレッチを長めに。
中殿筋をストレッチでほぐすメリット
ご説明したように、中殿筋は股関節の動きをサポートしています。股関節は人間の体の中で一番大きな関節で、上半身の重みを支えています。
そのため重みが負荷になり、関節の動きが悪くなりやすい部分でもあります。股関節の動きが悪くなると、連動して中臀筋も硬くなり、その硬さが不調の原因になる場合があります。
硬くなった中臀筋をストレッチでほぐすことで、腰痛改善や冷え、むくみの改善など、たくさんのメリットが期待できます。次から、どんなメリットがあるのかみていきましょう。
腰痛改善
中殿筋が柔らかくなるとまず期待できるのが、腰痛改善効果です。
腰痛の原因の一つに、中臀筋のほか、同じくお尻にある「梨状筋(りじょうきん)」などの筋肉の硬さがあげられます。これらはデスクワークなどで長時間座りっぱなしの姿勢が続くことが主な原因。
お尻の筋肉が硬くなることで姿勢が崩れ、腰痛はもちろん、お尻から足にしびれが起こる「坐骨神経痛」も引き起こしやすくなります。
中殿筋ストレッチで股関節の柔らかくなると、姿勢が改善。姿勢の悪さが原因だった腰痛や坐骨神経痛も軽減してくるでしょう。
冷え・むくみの軽減
中臀筋をほぐすと、血流が良くなり下半身の冷えやむくみの改善に効果的です。
柔らかいイメージのあるお尻ですが、歩いたり座ったりと日常生活でよく使われる筋肉のため、実は硬くなりやすいパーツ。中臀筋が硬くなって慢性化すると、下半身に血液やリンパ液、酸素が巡らなくなります。
冷えやむくみは血流の悪さが引き起こす不調です。ストレッチを行い、中臀筋をほぐすことで血流が改善。冷えやむくみもスッキリしますよ。
姿勢改善・スタイルアップ
腰回りにある骨盤と中臀筋は深く関わっています。中臀筋のストレッチで骨盤の歪みが改善されると、姿勢が改善。するとお腹周りがスッキリしてスタイルアップにつながります。
中臀筋が硬い状態では、骨盤が後ろに傾き、常に猫背に。また、骨盤が後ろに傾いていると下腹がぽっこり出てしまいます。
中臀筋が柔らかくなり、骨盤が正しい位置に戻ると、すっと伸びたスタイルのいい立ち姿が復活。骨盤の内側にある臓器の血流も良くなるでしょう。
ヒップアップ
中殿筋のストレッチでお尻の外側の筋肉をほぐすと、丸みのある美しいヒップを目指すことができます。
弾力があって女性らしいお尻を目指すには、血流の良さが欠かせません。デスクワークなどで同じ姿勢が続いたり、運動不足になったりすると筋肉は固くなります。ストレッチを習慣にして筋肉がゆるんだ状態になると、血流がスムーズに。次第にハリのある柔らかいお尻を目指せるでしょう。
腰痛改善に効果的! 4つの「中殿筋ストレッチ」
中臀筋の硬さは、骨盤の歪みを引き起こし、腰痛に直結します。今、腰痛の症状がなくても、中殿筋を常に柔らかく保ち、今後のために予防することが大切です。
ここからは、腰痛の改善に効果的なストレッチをご紹介します。腰痛対策のみならず、姿勢改善やヒップアップにも効果的です。ぜひお試しを!
イスを使ったストレッチ
イスに座ったままで、手軽にできるストレッチ。仕事や家事の合間のすきま時間で、簡単に中臀筋をほぐすことができます。
【やり方】
- 床に足がつく高さのイスに、やや浅めに座る。
- 左脚のひざを曲げ、外くるぶしを右ひざの辺りに乗せる。両手は左脚のすねか腰に添える。
- 息を吸って背骨を真っ直ぐに伸ばし、そのまま上体を前に倒す。お尻の外側に伸びを感じたら、そこで20秒キープ。
- 脚を入れ替え、反対側も同様に行う。
【ポイント】
上体を倒すときに背中が丸くなると、中臀筋がしっかり伸びません。背筋を伸ばしたまま、骨盤ごと前に倒すことを意識しましょう。
寝たままできるストレッチ
寝たままの体勢でできる仰向けのストレッチ。布団の上で行ってもOK。余分な力が入らないので、背中に力が入りやすい人におすすめです。
【やり方】
- 仰向けに寝て、両方のひざを立てる。
- 左脚を右脚の上にのせて脚を組む。そのまま、両脚を胸の方へ引きつけ、両手で脚を抱えて20秒キープ。
- 脚を組み替えて、反対側も同様に行う。
【ポイント】
力んでしまうと中殿筋が伸びにくくなるので、上半身に力が入り過ぎないようにしましょう。
ヨガのポーズでストレッチ
ヨガの「眠った鳩のポーズ」でも中殿筋をほぐすことができます。深い呼吸でストレッチすることで、リラックス効果も期待できます。
【やり方】
- 四つ這いになり、左ひざを両手の間にずらす。
- 左足首を右手首に近づけて、左脚のひざを外側に倒す。右ひざを少しずつ後ろへずらして股関節を伸ばすような姿勢をとり、体を安定させる。
- 下腹を引き込み、左のお尻を伸ばすように床へ近づける。このまま20秒キープ。
- 脚を入れ替えて、反対側も同様に行う。
【ポイント】
ケガを防ぐため、片側のストレッチが終わったら、四つ這いの姿勢に戻りましょう。ゆっくり呼吸をしながらお尻の伸びを感じてください。
テニスボールでストレッチ
最後は、テニスボールを使って、硬くなった中臀筋をほぐす方法です。テレビを見ながらできるので毎日の習慣に。
【やり方】
用意するもの:テニスボール(硬式用)。100円ショップのものでOK。
- 三角座りをして、両手は後ろにつけて体を支える。左のお尻、坐骨の少し上辺りに、テニスボールを置く。
- 重心を左側に移動させてボールの上に乗り、右のお尻を少し浮かせる。
- 前後に体をスライドさせるようにして、お尻の下でボールを転がしてほぐす。
- 反対側も同様に行う。
【ポイント】
ボールの上にドンと座ると、筋肉が緊張します。お尻にボールを潜り込ませてから、上に乗ってください。テニスボールの他にも、フォームローラーやストレッチポールでもOK。
ストレッチをするときに気をつけるべきポイント
ストレッチは少しのスペースがあれば、誰でも簡単に始められる運動です。しかし、無理なストレッチは効果がないばかりか、ケガにもつながりかねません。安全で効果的なストレッチをするために気を付けるべきポイントをお伝えします。
20秒以上キープする
ストレッチのはじめの方は、筋肉があまり伸びません。それは、急に伸ばされた筋肉に対して「反射」が働くからです。「反射」とは熱いやかんに触れたときに、瞬時に手を引っ込めるような、意識することなく起こる人間の動作のこと。
これを考慮して、しっかり筋肉を伸ばすためにも最低でも「20秒以上」はキープしましょう。1回20~60秒を目安にするのがおすすめ。
呼吸を止めない
ストレッチをしている間は、呼吸を止めないことも大切です。特に息を吐くタイミングで、副交感神経が優位になり、心身がリラックスモードに切り替わります。するとストレッチが深まりやすいといわれています。
反動をつけない
反動をつけてストレッチをすると、筋肉があまり伸びないばかりか、ケガにもつながりやすくなります。反動をつけずに、ゆっくりと筋肉を伸ばして、じっくりとストレッチの気持ちよさを味わいましょう。
また、痛みを感じるまでがんばってストレッチするのもNG。痛いと力が入ってしまい、筋肉が伸びなくなります。「イタ気持ちいい」くらいがちょうど良い強度です。
ストレッチに最適なタイミングとNGなタイミング
ストレッチのベストタイミングは運動後やお風呂上がり。 筋肉が温まり、血行も良くなっているので効果が期待できます。
反対に、寝起きや食後すぐのストレッチはタイミング的にはNG。寝起きは体がこわばっていて、ケガにつながりやすくなります。食後すぐは、エネルギーが消化に使われるため、運動をするには不向きといえるでしょう。
また、骨折や靭帯の損傷などのケガの直後、関節に痛みや腫れがある場合もストレッチを控えたほうがいいでしょう。このような場合は医師に相談してください。
腰痛を繰り返さないためには?
腰痛対策には、ご紹介したような中殿筋のストレッチで効果的ですが、そもそも筋力が低下すると腰痛の引き金になることがあります。次からご紹介する「中臀筋のトレーニング」も上手く取り入れて筋力をアップさせ、痛みの出にくい体を目指しましょう。
中殿筋を鍛える簡単トレーニング
中臀筋のトレーニングで筋力がアップすると、骨盤の安定感が高まります。そのため骨盤の歪みが原因の腰痛を予防することができます。また、中臀筋は骨盤を支えているため、立つ・歩くといった動作が美しくなります。
中殿筋を鍛える「クラムシェル」のやり方
クラムシェルとは、トレーニングの動作が二枚貝に似ていることから名付けられました。横向きで寝て、ひざを閉じたり開けたりして、腰痛を予防し、形の良いお尻を作ります。
【やり方】
- 左側を下にして横向きに寝る。ひざを90度に曲げ、お尻の延長線上に、かかとがくるようにする。
- 左右の足の内側をくっつけたまま、右ひざを肩の高さまでゆっくり開く。右ひざをゆっくり閉じる。これを15回繰り返す。
- 右側を下にして寝て、反対側も同様に行う。
【ポイント】
呼吸は止めずに、自然に続けながら行います。ひざをガバッと開いてしまわないように、ゆっくりと動きましょう。
まとめ:中臀筋のストレッチで腰痛対策とヒップアップを
体の中心部にある中臀筋は、姿勢の維持や歩くといった人間の基本的な動きにも深く関わっています。
硬くなった中殿筋をストレッチでほぐしたり、ご紹介したエクササイズで鍛えることで、腰痛の対策や予防ができます。それだけでなく、中殿筋が柔軟になると、ヒップアップや冷え・むくみの改善など、さまざまな良い効果が感じられるでしょう。
いま、腰痛で悩んでいる方や、腰回りがだるい、疲れている方は、ご紹介した臀筋のストレッチをぜひ習慣にしてみてください。
インナーマッスルを鍛えるといいとよく聞きますが、どんなメリットがあるのか知っていますか。今回はパーソナルトレーナーの藤本千晶が、インナーマッスルとは何か、鍛えるメリットや鍛え方を解説します。
[ 監修者 ]