脂質制限ダイエットのやり方は?成功のポイントと糖質制限との比較
脂質を抑えて摂取カロリーを減らす「脂質制限ダイエット」。糖質制限のように食事から減らすだけでいいのか、正しいやり方が気になるところ。管理栄養士が脂質制限ダイエットの始め方とポイントを解説します。
目次
脂質制限ダイエットとは?
ダイエット中、カロリーの高い脂質は抑えたいけれど、健康的にやせるためには、どれくらい制限したらいいのか気になりますよね。食事の中の「脂質」を制限する脂質制限ダイエットとは、脂質を抑えることで摂取カロリーを減らし、体重を落とすダイエット方法です。脂質を抑えることはダイエットに効果的ですが、体に必要な栄養素でもあり、やり方に注意が必要です。
脂質とは、糖質、たんぱく質と並ぶ「三大栄養素」の一つ
脂質は、糖質やたんぱく質と同じく「三大栄養素」の中の一つで、重要なエネルギー源です。糖質とたんぱく質は1gあたりのカロリーが4kcalであるのに対し、脂質は1gあたり9kcalと高くなります。そのため、脂質を制限することで効率的にカロリーを抑えることができます。
ダイエット中は悪者のようにされる脂質ですが、エネルギー源となる他にも、私たちの体にとって欠かせない役割を果たしています。
【脂質の働き】
・重要なエネルギー源となる
・油に溶ける「脂溶性ビタミン」の吸収を促す
・細胞膜やホルモンの材料となる
・皮下脂肪として臓器を守る
・体を寒冷から守る
このように、脂質は私たちの体にとって必要不可欠な栄養素です。脂質は普段食べているさまざまな食品の中に含まれているため、意識しなくても必要量またはそれ以上の脂質を摂取している人が多いと考えられます。
脂質の必要量は?
脂質は生命を維持するために欠かせない栄養素であるため、必要量が決められています。通常、摂取エネルギーの20~30%を脂質で摂るのが理想的です。(※1)
(※1)健康長寿ネット「三大栄養素の脂質の働きと1日の摂取量」より
(例)30~49歳女性の場合
生活活動レベルがふつうの人では、1日に必要なエネルギー量は2,050kcal程度です。そのうち20~30%を脂質で補うには、だいたい45~68g程度が適切な摂取量になります。
(例)30~49歳男性の場合
生活活動レベルがふつうの人では、1日に必要なエネルギー量は2,700kcal程度です。そのうち20~30%を脂質で補うには、だいたい60~90g程度が適切な摂取量になります。
体に入った脂質は、血液中にある場合は「中性脂肪」と呼ばれます。中性脂肪は活動のエネルギーになりますが、摂取量が多すぎて消費されずに余ると、血管内では動脈硬化、肝臓内では脂肪肝になるリスクが高まります。さらに、中性脂肪が蓄積すると内臓脂肪や皮下脂肪となるのです。
内臓脂肪は、名前の通り内臓に蓄積した脂肪のことで、さまざまな生活習慣病のリスクとなります。健康のためにも、脂質は適量を摂ることが大切です。
ウエストのサイズや体脂肪など、ぜい肉に悩んでいる人も多いのでは。お腹周りについた内臓脂肪を減らすには、まず食事を変えることが大切。2週間ほどでスッキリさせる、内臓脂肪を最速で落とす食べ物を紹介します。
脂質制限ダイエットの効果
脂質は、先ほども説明したように糖質やたんぱく質に比べて高カロリーなため、摂取量を制限すると全体的な摂取カロリーが減り、やせることができます。
さらに脂質制限ダイエットでうれしいのは、たんぱく質は制限する必要がないこと。たんぱく質は、体の筋肉を作る材料になります。つまり、脂質制限ダイエットは体重が減っても筋肉は落ちにくいということ。筋肉量を保てるため、基礎代謝を落とさずダイエットができます。
脂質制限ダイエットのやり方
脂質制限のダイエット効果を説明してきました。ここからは、「脂質」とは何を指すのか、食事の中でどんな油を抑えたらよいのかを解説します。まずは脂質の種類についてです。
脂質には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の2種類ある
脂質は「飽和脂肪酸(ほうわしぼうさん)」と「不飽和脂肪酸(ふほうわしぼうさん)」、2種類の脂肪酸から構成されています。脂肪酸とは、脂質を構成する主要な要素。脂肪酸がどんな成分と組み合わさるかによって脂質の種類が変わってきます。
飽和脂肪酸とは、肉類やバターなどの常温で固体の脂のこと、不飽和脂肪酸とは植物や魚などに含まれる常温で液体の油のことです。
不飽和脂肪酸はさらに細かく分けられ、油を加工するときに生成される「トランス脂肪酸」、健康によいと言われている「一価不飽和脂肪酸(いっかふほうわしぼうさん)」「多価不飽和脂肪酸(たかふほうわしぼうさん)」に分かれています。
【飽和脂肪酸】
肉類、バター、ラード、牛脂、チーズなど
【不飽和脂肪酸】
・トランス脂肪酸:マーガリン、ショートニングなど
・一価不飽和脂肪酸:(オメガ9系)オリーブオイル、アボカドなど
・多価不飽和脂肪酸:(オメガ3系)DHA、EPA、亜麻仁油、えごま油など。(オメガ6系)植物油、大豆油、コーン油など
脂質はこのように分類されており、健康のために摂ってもいい油と体に悪いため控えるべき油があります。「オメガ」とは、脂肪酸の分類で、脂肪酸を形成している炭素分子の強い結合がどの場所にあるかを示しています。
脂質制限ダイエットでは主に、控えたほうがいい油の「飽和脂肪酸」と「トランス脂肪酸」を制限します。
続いて、脂質制限ダイエットではどんな食品を控えるべきなのか、また制限しなくてもよい食品についても詳しく解説します。
脂質制限ダイエットで食べるのを控えたい食品
先にご説明したように、脂質には摂ってもいい脂質と控えたい脂質があります。ここでは、脂質制限ダイエットの際に控えるべき食品を紹介します。
【食べるのを控えたい脂質】
・脂質が多い肉類や加工肉
・マーガリン、ショートニングなどのトランス脂肪酸を含む脂
・揚げ物
・インスタント食品、ファストフード
・洋菓子類
・マヨネーズやオイル系ドレッシング類
これらの食品には、制限したい脂質である「飽和脂肪酸」や「トランス脂肪酸」が含まれています。このような脂質を摂り過ぎると中性脂肪が増え、肥満の原因となります。
さらに、悪玉コレステロールを増やして動脈硬化を促進させたり、心筋梗塞のリスクを高めたりする原因になります。ダイエットだけでなく、健康のためにも摂取を控えるようにしましょう。
脂質制限ダイエットで制限しなくてもよい脂質
脂質の中でも一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸のように、体によい影響を与える脂質もあります。これらの油は体に必要なホルモンの材料になったり、善玉コレステロールを増やしてくれたりする働きがあります。極端に制限する必要はなく、適量を摂るようにしましょう。
【制限しなくてもよい脂質】
・一価不飽和脂肪酸(オメガ9系):オリーブオイル、なたね油、アボカド、アーモンドなど
・多価不飽和脂肪酸(オメガ6系、3系):DHA、EPA、亜麻仁油、くるみ、植物油、コーン油、大豆油など
【不飽和脂肪酸の健康効果】
・動脈硬化、高血圧予防
・血栓症予防
・悪玉コレステロールを減らす
・アレルギー症状の緩和
・皮膚の健康維持
・学習能力、記憶力を高める
これらの脂質は「必須脂肪酸」と呼ばれ、体内で作ることができません。食品から摂取する必要のある油なので、意識して摂るようにしましょう。
脂質制限ダイエットで食べてよい食品
脂質制限ダイエットは、“脂質だけ”を抑えるダイエット方法です。それ以外の食べ物は適量の範囲内で何でも食べることができます。ご飯や肉、魚も極端に制限する必要はありません。
【食べてよい脂質】
・炭水化物:ご飯、麺類はほとんど脂質が含まれていないので、制限なく食べることができます。ただし、パンはバターや生クリームなどの油脂を含むため控えましょう。
・肉類:脂身を除けば食べることができます。脂身は脂質が多いので、調理のときに取り除くか、脂身の少ない肉類を。赤身肉、鶏むね肉(皮なし)、鶏ささみ、もも肉などが低脂肪でおすすめです。
・魚介類:魚の脂はDHAやEPAなど積極的に摂りたい、体にいい脂質です。控える必要はありません。ただし、加工品には余分な脂質が添加されている場合があるため、控えましょう。また、貝類や甲殻類はほとんど脂質が含まれないためダイエットに活用できます。
・野菜、果物、海藻、きのこ類:ほぼ脂質はゼロに近いため、制限なく食べることができます。ただし、アボカドは脂質量が多いため、ダイエット中は控えましょう。
・卵、乳製品:卵の脂質は大部分が卵黄に含まれています。そのため卵を食べる際は、卵黄は控えましょう。卵白はほとんど脂質を含まないので、制限する必要はありません。また、乳製品は無脂肪や低脂肪を選べば、食べてもOK。ただし、生クリームは脂肪分が多いので控えましょう。チーズも種類によって脂質量が異なります。食べるなら脂質量の少ないカッテージチーズがおすすめ。
脂質制限ダイエットを成功させるポイント
脂質制限ダイエットは「消費カロリー>摂取カロリー」となるように脂質を制限すればやせるため、正しい方法で行えば成功しやすいダイエットです。ただし、摂らなければならない脂質もあるため、使用する油の種類や使い方に注意しましょう。調理の際のポイントをまとめました。
調理方法に気をつける
脂質制限をする際には、調理方法にも注意を。揚げ物は、食材がたくさんの油を吸収するため、体によい油を使ったとしても摂取量が多くなりすぎます。
炒め物にも注意が必要です。調理のときのポイントは、計量すること。容器からそのままフライパンへ油を注ぐと、見た目は少なくても意外と大量の油を使っている場合があります。
炒め物をする際には、計量スプーンなどで油の量を測ってから調理を。また、オリーブオイルやごま油など、熱を加えても酸化しにくい油がおすすめです。
脂質を上手にカットするなら、油を使わないで蒸す、茹でる、グリルで焼く、電子レンジ調理などを取り入れましょう。
調味料の油にも注意する
料理に使う油を減らしても、気づかないうちに調味料で油を摂っている場合もあります。特に注意したいのは、控えたい食品でも紹介したマヨネーズやドレッシング。
健康にいいと思ってサラダをたくさん食べる人も多いですが、実はドレッシングで脂質の摂取量をオーバーしている可能性も。サラダを食べる際には、ノンオイルドレッシングやオリーブオイルと塩で食べるなど、脂質を抑える工夫しましょう。
「見えない油脂」を控える
お菓子、インスタント食品には見た目だけは気づかない「見えない油脂」が含まれています。これらは製造過程でバターや植物油脂など多くの油が使われているため、想像以上に油を含んでいます。
また、食べてもよい食品としてあげた肉の中には、控えた方がいい油の飽和脂肪酸を多く含む食材もあります。それが、バラ肉やサーロイン、鶏皮などの脂質の多い肉類です。
さらに乳製品は、バターは80%近く、生クリームは35~45%が脂肪分です。これらの食品には「見えない油脂」が多く含まれていることを把握し、できる限り控えるようにしましょう。
糖質制限と同時に行わない
ダイエット法として定番化した「糖質制限ダイエット」は、脂質制限と同じように特定の栄養素を制限することでやせるダイエット方法です。
やせたいと思って糖質制限を始めている人も多いと思いますが、脂質制限と糖質制限を同時に行うのはやめましょう。2つあわせて行うと、食べられる食材が限定されてしまい、体に必要な栄養素を補うのが難しくなります。
栄養不足によって体に悪影響が出る可能性もあるので、脂質制限ダイエットを行う際は、糖質制限は行わないようにしましょう。その逆も同じです。
最近感じる不調や症状は、糖質不足が原因? ダイエットのために極端に炭水化物を制限すると、体や心にとって逆効果になることも! 糖質制限による症状や注意すべきポイントを、医師の松本和隆さんに聞きました。
極端に脂質を減らし過ぎない
脂質は体にとって欠かすことのできない必要な栄養素です。脂質を減らし過ぎてしまうと、ホルモンが作れなくなる、油に溶ける脂溶性ビタミンの吸収ができなくなるなど、体の機能がうまく働かなくなります。
脂質制限をする際は極端に減らし過ぎず、適度な脂質は食事から摂るように心がけましょう。
適度な運動を取り入れる
脂質制限ダイエットをする際は、食事の脂質を減らすだけでなく、適度な運動も取り入れましょう。運動によって体を動かすことで摂取した脂質や糖質を燃焼。それらをエネルギー源とすることで、体脂肪の減少につながります。また、運動は基礎代謝を上げ、摂取した栄養素を効率よく利用できる体をつくります。
脂質制限と糖質制限のメリットとデメリット
ダイエットをしたいと思っている人の中で、脂質制限と糖質制限のどちらがいいのかを迷っている人も多いのではないでしょうか。脂質制限と糖質制限、どちらのダイエット法もそれぞれにメリットとデメリットがあります。
体質的にも向いている場合と不向きな場合がありますので、次にまとめた内容を参考にしてみてください。無理のない範囲で自分にとって取り入れやすいダイエット法を選ぶことをおすすめします。
脂質制限のメリット
・炭水化物は食べられるので、食事量には満足しやすい
・炭水化物やたんぱく質がエネルギー源となるため、筋肉量が減らない
・筋肉が保たれているため、リバウンドしにくい
脂質制限のデメリット
・ダイエット効果が出るまでに時間がかかる
・腹持ちのよい脂質を制限するため、空腹を感じやすい
・外食が多いと、脂質を制限しにくい
糖質制限のメリット
・比較的短期間で効果が出やすい
・血糖値が上がりにくいため、太りにくい
・中性脂肪を減らしやすい
・糖質を抑えるだけなので、外食時でも対応しやすい
糖質制限のデメリット
・低血糖になるリスクがある
・頭痛や思考力の低下などが起こりやすい
・体が糖質を吸収しやすくなっているため、糖質制限をやめると太りやすい体質になることも
脂質制限ダイエットのメニュー例
最後に脂質を40g以下に抑えた1日のメニュー例を紹介します。このメニューは、1日の総カロリーが約1,500kcalでそのうち脂質が占めるカロリーは約300kcal、脂質量は33.5gになっています。
【朝食】脂質:7.6g
・サラダチキンのベーグルサンド
・はちみつヨーグルト(低脂肪)
ベーグルは牛乳、バター、卵を使わずに作られているため脂質が少なく、脂質制限中のパンが食べたいときにおすすめです。サンドイッチにして野菜や鶏むね肉のサラダチキンを挟むと、栄養バランスもよい朝食になります。
【昼食】脂質:13.7g
・ご飯
・牛もも肉のステーキ
・豆苗とトマトのサラダ
・きのこと生姜のコンソメスープ
ステーキは、脂の少ない牛もも肉を選ぶことで、脂質制限中でも食べることができます。ソースはポン酢や和風ソースなどの油を使っていない種類を選ぶと脂質をカットすることができます。
【間食】脂質:2.5g
・豆乳ココアババロア
溶かしたゼラチンに豆乳とココアを入れて固めるだけの簡単デザート。豆乳は牛乳に比べ、脂質が少ないのでおすすめ。ココアババロアにすると、チョコレートそのものを食べるよりも、脂質を抑えながらも満足感のあるデザートが食べられます。
【夕食】脂質:9.7g
・ご飯
・タラと野菜のホイル焼き
・もやしときゅうりの中華和え
・豚もも肉の豚汁
ホイル焼きは調理に油を使わないため、脂質制限に適したメニューです。今回は脂質の少ないタラを使用。鮭や鯛などもおすすめです。野菜をたくさん入れてボリュームを出すと、満足感のある主菜に。豚汁は脂質の多いバラ肉ではなく、もも肉を使うことで脂質を抑えることができます。
まとめ:脂質制限ダイエットを上手に取り入れて健康的なスリム体型に
脂質は体にとって必要な栄養素です。脂質制限ダイエットは一切脂質を摂らないのではなく、控えた方がいい油と控えなくてもいい油を見極めることが大切。制限する脂質の種類や量に注意して、上手に取り入れましょう。
また、揚げたり大量の油を使ったりするのをやめて、蒸す、茹でるといった調理法を。普段の調理を見直すだけでも、脂質を自然とカットできます。無理のない範囲で脂質の摂取量を調整して、健康的にやせるダイエットを実践しましょう。