「口内炎」ができやすい人の特徴は?4つの原因タイプ別に解説|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「口内炎」がテーマ。4タイプ別の東洋医学的セルフケアで、お口のトラブルを改善しましょう。
目次
余分なものが多い人、うるおいや元気不足の人は「口内炎」ができやすい
口の中にできると、食事や会話のたびに痛みを感じる口内炎。大きさに関わらず、治るまでつらい思いをしますよね。
口内炎とは、口の粘膜や舌、歯茎、唇の内側などにできる炎症のこと。主な原因は栄養不足や免疫力低下のほか、噛んでしまう、矯正器具や入れ歯などが当たってしまうなどの物理的刺激があげられます。
東洋医学では、口内炎の原因は大きく分けて2つあると考えられます。1つは、体内に余分なものが蓄積して熱がこもり、口内炎としてあらわれるパターン。もう1つは、体に必要なうるおいや元気が不足して口内炎になるパターンです。どちらも口内炎ができやすい人の特徴と言えます。
「口内炎がよくできる」「なかなか治りにくい」という人は、予防のためにも何が原因なのかを見極めることが大切。お口のトラブルは、ふだんの食事内容や生活習慣があらわれます。
原因別「口内炎」4タイプを解説
口内炎は、原因別に4タイプあります。どれに当てはまるかを一緒に考えてみましょう。記事の後半では、タイプ別の養生法やツボをご紹介しています。タイプに合う対処法をご参考に。
(1)胃腸に熱がこもったタイプ
1つ目は、東洋医学で胃腸をあらわす「脾(ひ)」に熱がこもったタイプ。暴飲暴食、脂っこい食事の摂り過ぎによって、体に余分な水分=湿が溜まり、消化不良で熱が生まれます。両方が合わさった「湿熱(しつねつ)」が体の中で発生。
弱った胃腸を写すかのように、口内炎ができやすくなります。このタイプは、腫れや痛みを伴う、白っぽい潰瘍なるのが特徴です。
(2)心に熱がこもったタイプ
2つ目は、生命活動や精神面に関係している「心(しん)」に熱がこもったタイプ。ストレスが多く、人に気を遣いすぎることによって心が疲れてしまい、熱がこもります。東洋医学で“舌は心の苗”といわれ、心の不調が舌にあらわれます。このタイプは、メンタル疲れを感じている人に多く、主に舌先に口内炎ができやすくなります。
(3)うるおい不足タイプ
熱がこもるパターンに対して、3つ目は「うるおい不足」タイプです。東洋医学では「気・血・水」が満たされバランスが整っている状態が健康とされます。このうち乾燥や加齢によって、水と血が不足するのがこのタイプ。水が足りないために、体にこもった熱を冷ますことができず口内炎に。口内炎のほかに口の中が乾燥しやすく、むし歯もできやすいのが特徴です。
(4)元気不足タイプ
4つ目は、気血水の中でも気=エネルギーが足りない「元気不足」タイプです。免疫力が低下して外からの邪気が体に侵入しやすくなっています。慢性的に元気がないため、ウイルスや細菌と戦う力が低下。気血水のバランスが崩れて熱がこもり口内炎に。
このタイプは口内炎ができると治りにくく、繰り返しやすいのが特徴。口内炎のほかにいつも疲労感がある、風邪をひきやすいという人も当てはまります。
4タイプ別 「口内炎」を改善・予防する食養生とアドバイス
食事がしみる、歯磨きすると痛いなど、お口にトラブルがあると日常生活にも影響します。つらい口内炎は、早めに解消したいものです。東洋医学では、食事や生活習慣を見直して、口内炎ができにくい体質をつくります。いまある炎症をおさえることはもちろん、口内炎ができにくい体質を目指しましょう。
胃腸に熱がこもったタイプ:湿熱を取る食べ物+あっさりした食生活
胃腸に熱がこもったタイプは、原因となる「湿熱」を取る食べ物を摂り、体の炎症をしずめましょう。
湿熱を取る食べ物…きゅうり、バナナ、春雨、こんにゃく、しそ など
その他、胃腸の熱を取る食べ物…はとむぎ、どくだみ茶 など
このタイプの口内炎は日頃の暴飲暴食が原因のため、食生活を根本的に改善しないと良くなりません。脂っこい食事やアルコールの飲みすぎを控えて、野菜中心のあっさりした食事に切り替えを。よく噛んで食べ、胃腸の負担にならない食生活を心がけましょう。
心に熱がこもったタイプ:熱を取る食べ物+自分だけのストレス発散法
このタイプも同じく体にこもった熱が口内炎の原因。心にこもった熱を取り除く食べ物を取り入れてみてください。
熱を取る食べ物…緑茶、菊花茶、ミント、大根など。夏はすいか、ゴーヤ、秋は梨などもおすすめ
人に気を遣いやすいこのタイプは、ストレスが溜まり、心が弱り気味。ストレス自体を避けることは難しいかもしれませんが、小さいうちに発散することでお口のトラブルを予防できます。人と話す、カラオケに行く、歩く。何でもいいので、気持ちがすっきりする方法を持っておきましょう。
うるおい不足タイプ:うるおいを補う食べ物+30分の早寝習慣
うるおい不足タイプさんは、水と血が足りていません。うるおいを補う食べ物で、体の中から対策を。中でも酸味と甘みの両方がある食べ物が効果的。ますます体が渇くので辛い物は控えめに。
うるおいを補う食べ物…はちみつ、レモン、トマト、ぶどう、りんご、卵など。秋は梨もおすすめ
食事も大切ですが、このタイプに一番必要なのはズバリ睡眠。水は眠っている間に補われます。睡眠時間が短く、質が悪いとますますうるおいが不足し、口内炎ができやすくなります。つい夜更かししてしまう人は、いつもより「30分」でいいので早寝をして体を労わりましょう。
元気不足タイプ:気を補う食べ物+深呼吸をして肺を元気に
元気不足タイプは、気を補う食べ物を。慢性的に体力が低下しています。そのため冷たい食べ物は避けて、温かく、消化のいい食べ物を選んで。
気を補う食べ物…豆類、大豆食品(豆腐、納豆)、山芋、かぼちゃ、りんごなど
このタイプは、胃腸と肺を労わる生活が回復のカギに。肺を元気にするにはたっぷり空気を入れて動かすこと。1日に何回か、ゆっくり深呼吸をしてみましょう。また、体調が良い日は、体を動かして体力アップを。
4タイプ別 「口内炎」対策に効果的なツボ
最後に、口内炎の改善や予防に効果的なツボをまとめました。ご紹介した4タイプ別になっていますので、当てはまるタイプのツボを押して、体質改善を目指しましょう。
脾=胃腸に熱がこもったタイプに効果的なツボ:内庭(ないてい)
内庭(ないてい):足の人さし指と中指の間。水かきの部分の赤い皮膚と白い皮膚の境目。
押し方:少し強めに指で押すか、人さし指と中指を開くように刺激するのがおすすめ。
心に熱がこもったタイプに効果的なツボ:少府(しょうふ)
少府(しょうふ):手のひらの薬指と小指の骨の間にあるツボ。手をグーにして握ったときに、ちょうど小指の頭が当たるところ。
押し方:深呼吸しながらイタ気持ち良い強さで押します。息を吐きながら押し、吸うときに力を抜く。これを数回繰り返します。
うるおい不足タイプに効果的なツボ:太谿(たいけい)
太谿(たいけい):アキレス腱と内くるぶしの間のくぼみにあるツボ。
押し方:深呼吸しながらイタ気持ち良い強さで、息を吐きながら押し、吸うときに力を抜く。これを数回繰り返します。ツボ周辺を触って冷たければお灸もおすすめ。
元気不足タイプに効果的なツボ:足三里(あしさんり)
足三里(あしさんり):ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指4本をそろえて、小指があたるところ。
押し方:深呼吸しながらイタ気持ち良い強さで、息を吐きながら押し、吸うときに力を抜く。これを数回繰り返します。お灸もおすすめ。
今月の養生ポイント:忙しくなる時期こそ“欲張らない”で心の安定を
ゆっくりできるようで、意外と忙しい年末年始。慌ただしく迫る新年を目前に、あれもこれも準備しなくちゃ! とフルパワーで過ごしているのではないでしょうか。
中国の言葉で「少欲抑目静耳」という言葉があります。これは、欲張らない、嫌なものを見ない、聴かないという意味。口内炎はもちろん、さまざまな不調の原因になる心のストレスは、すべて自分の中にある“欲”から生まれます。ストレスが溜まっているなと感じたら、過剰な欲を手放し、他人の幸せは見ない・聴かないふりをすることも大切。
つい色々と検索して一喜一憂してしまう時代ですが、忙しいこの時期こそ、情報を遮断して心を落ち着けて過ごしてみませんか。心も体も健康に、すがすがしい気持ちで2023年を迎えましょう!
イラスト/植松しんこ
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