今日も出ない…が楽になる!タイプ別「便秘改善法」|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「便秘」がテーマ。東洋医学からみる“便秘タイプ”をもとに対策を紹介します。
目次
原因はストレス?血の不足?東洋医学的4つの「便秘タイプ」
今日も出なかった…。発酵食品をたくさん食べているのに…。便秘が続くと、何をしていても気になって仕方ないですよね。お腹の張りもどんどんつらくなり、気分まで落ち込んでしまう人も多いのではないでしょうか。
「便秘」と一言でいっても、東洋医学からみると、原因や症状は人によってさまざまで、4つのタイプに分けられます。
次から、紹介する4タイプの特徴をチェックして、まずは自分に合う解決策を試してみてください。薬にたよらず、食事や生活、ツボでできる東洋医学的セルフケアを解説します。
(1)気の流れが滞っている「ストレス過剰タイプ」
ストレスが多く、「気=エネルギー」の流れが悪くなり便秘になっているのが「ストレス過剰タイプ」。
旅行や友人宅に泊まりにいくなど、環境が変わると出にくくなるのが特徴。また、お腹の張りを感じたり、ゲップが多くなったりすることも。ストレスにより、便秘と下痢を繰り返す人もこのタイプで、現代人の多くが当てはまります。
(2)イライラしやすい「熱過剰タイプ」
イライラしやすく暑がりさんに多いのが「熱過剰タイプ」。体に余分な熱がこもり、そのせいで水分がなくなり腸が乾燥。潤い不足により、大腸の中で便が固くなっています。
脂っこいものや辛いもの、味の濃いものが好きな人が多く、便のニオイや口臭がきつい場合も。
(3)髪や肌につやがない「血不足タイプ」
「熱過剰タイプ」は“熱”という余計なものがこもっているのに対し、「血不足タイプ」は本来必要な「血」が足りない状態。
体に潤いを与える血が不足することで、便が乾燥気味に。血が不足している人は、髪がパサつきやすい、肌が乾きやすいといった特徴があります。生理前に便秘になる人もこのタイプ。
(4)体が冷えている「元気不足タイプ」
東洋医学の「気=エネルギー」の中には「元気」も含まれます。元気には「温煦(おんく)作用」といい、体を温める働きがあります。
しかしこのタイプは、体が常に冷えていて元気が足りず、便を押し出す力が低下。仕事で無理をしすぎて疲れ切っている、寝不足が続いて慢性的にだるい、といったエネルギー不足で弱っている人が当てはまります。
紹介した4つのタイプのうち、1つだけに当てはまる人もいれば、原因や特徴によっては2つ以上のタイプに重なる人もいます。
例えば…
・ふだんは「ストレス過剰タイプ」、生理前になると「血不足タイプ」にも当てはまる
・仕事の忙しさによって「ストレス過剰タイプ」の時期と、「元気不足タイプ」の時期がある
といったように、同じ人でも生活スタイルや生理周期などによって変わります。便秘がつらい…と思ったときは、その時期の体調や生活習慣を振り返ってみて、自分のタイプを見極めてみましょう。
次からは、タイプ別に便秘に効果的な食べ物を紹介します。
「ストレス過剰タイプ」の便秘を改善する食べ物
「ストレス過剰タイプ」は、気の流れをスムーズにする香りのいい食べ物や、腸に働く食べ物を摂りましょう。
大根、カブ、パクチー、杏仁、オリーブオイル など
「ストレス過剰タイプ」は、すべてのストレスを避けることは難しいかもしれません。そのため、こまめに発散することを心がけましょう。
人に話す、歌うなど、体の外に追い出す習慣や、軽く汗をかく程度の運動することも、心のデトックスになります。
「熱過剰タイプ」の便秘を改善する食べ物
イライラして腸の潤いが不足している「熱過剰タイプ」。腸を潤し、熱を冷ます食べ物を摂り入れましょう。
ごぼう、きゅうり、レタス、こんにゃく、豆腐、りんご、はちみつ、牛乳 など
「熱過剰タイプ」の便秘改善で一番大切なのが食事の見直し。脂っこくて味が濃く、辛い食事はなるべく避けて、お酒もほどほどに。
あっさりした味付けの野菜中心の食事に変えるだけでも、便がスムーズに出るようになるでしょう。
「血不足タイプ」の便秘を改善する食べ物
「血不足タイプ」に必要なのは、血を補う食べ物。赤いもの、黒いものを積極的に食事に摂り入れてみてください。
赤いもの…なつめ、クコの実、プルーン、いちご、トマト など
黒いもの…黒ゴマ、ひじき、牡蠣 など
「血不足タイプ」の便秘は、生理前にひどくなることがあります。特に生理前後は、絶対に無理をしないで養生を。
生理の時期だけは仕事や家事をできるだけセーブして、自分の心と体を思いっきり甘やかしてみてください。
また、目を酷使することは血を消耗させることにつながります。ふだんからスマホやパソコンを長時間使わないように心がけましょう。
「元気不足タイプ」の便秘を改善する食べ物
体が冷えて疲労感が続いている「元気不足タイプ」。体を温める食べ物や、胃腸の働きを高める黄色い食べ物がおすすめです。
黄色いもの…米、バナナ、じゃがいも、とうもろこし など
体を温めるもの…しょうが、クルミ、松の実、八角、シナモン など
便を押し出す力がない「元気不足タイプ」は、明らかに休息が足りていません。しっかり睡眠をとって体を休めることが第一優先です。
また、食事はよく噛んで消化のいいものを食べましょう。
【全タイプ共通】便秘を改善するツボ
便秘がつらいときに効果的な5つのツボを紹介します。お腹や背中、手のツボで、いつでも気づいたときに自分手で押すだけ。どのツボも、リラックスしながら押すと、より効果的です。
【お腹のツボ】天枢(てんすう)
ツボの場所:おへそから指3本分外側の左右にあるツボ。
押し方:仰向けに寝て、リラックスした姿勢になります。人差し指、中指、薬指の3本を揃えて両手の指先を重ね、1カ所ずつ息を吐きながらやさしくツボを押して刺激。
【腰のツボ】大腸兪(だいちょうゆ)
ツボの場所:骨盤の上、腰のベルトライン上にあるツボ。背骨から指2本分外側の左右にあります。
押し方:腰に手を当てて、親指で体の中心に向かって押し込みましょう。押しにくい場合は、仰向けに寝て、ゴルフボールやテニスボールをツボの下に置いて刺激を。
【手のツボ】合谷(ごうこく)
合谷(ごうこく):親指と人差し指の骨の付け根が合わさった、V字になったくぼみ。
押し方:反対の手の親指と人さし指ではさむようにして、イタ気持ちいいと感じる強さで3秒ほど押し、ゆっくり離します。これを3~5回繰り返します。
合谷は、大腸の経絡(けいらく=エネルギーの通り道)にあり、万能のツボといわれています。ストレスを緩和し、自律神経のバランスを整える効果があるといわれ、便通を整えてくれます。
【腕のツボ】支溝(しこう)
ツボの場所:手の甲側の手首から指4本分離れたところで、腕の中央にあるツボ。左右どちらの腕にもあります。
押し方:反対側の手で腕をつかみ、親指の腹をツボにあて、少し強めに1~3分ぐらい押し続けます。揉むようにマッサージするのも効果的です。
今月の養生ポイント:大腸が働く朝に排便リズムを
東洋医学では「子午流注(しごるちゅう)」という考え方があります。これは、1日24時間を2時間ずつ区切り、各臓器がその時間帯に働いたり、休んだりすることを表しています。
この考え方では、便をつくる大腸は朝5~7時に当てはまります。この2時間に、白湯を飲んで腸を潤したり、朝日を浴びながら外を散歩したりすると、腸がスムーズに働きます。
しかし現代人は、早朝にこうした時間を過ごすことが難しいかもしれません。その場合は、5~7時の2時間にとらわれず、朝起きたら腸のために「水分をしっかり摂る」「お腹をマッサージする」「朝食後はトイレに行き排便習慣を脳にインプットさせる」といった“腸にいい習慣”で便秘の改善を目指しましょう。
「便秘はもう体質だから…」とあきらめる必要はありません。まずは、生活の中で少しずつできることを始めてみてくださいね。
イラスト/植松しんこ
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