腸腰筋の痛みは姿勢崩れのサイン?理学療法士おすすめのストレッチ
股関節の付け根の部分に痛みを感じる…。そんな人は姿勢にも関係している「腸腰筋」という筋肉が衰えているかもしれません。美しい姿勢を保つために欠かせない腸腰筋のはたらきや痛みの原因、セルフケアをご紹介します。
目次
腸腰筋(ちょうようきん)とはどんな筋肉?
スマホやパソコンを長時間使うことが多くなると、ふと自分の姿勢の悪さが気になりませんか。正しい姿勢をキープするために働いているのが、腰回りにある「腸腰筋(ちょうようきん)」という筋肉です。まずは腸腰筋の位置やはたらきを解説します。
腸腰筋は腰周りの筋肉のこと
腸腰筋は腰回りの筋肉のことで、以下の3つの筋肉を含めて指す言葉です。
- 大腰筋(だいようきん)
- 小腰筋(しょうようきん)
- 腸骨筋(ちょうこつきん)
大腰筋と小腰筋は腰周りの背骨からはじまり、太ももの内側についている筋肉です。腸骨筋は骨盤からはじまり、大腰筋・小腰筋と同じように太ももの内側につく筋肉です。これらを「腸腰筋」といいます。
それぞれの筋肉は太ももを上げたり、骨盤や背骨を安定させたりする役割があります。腸腰筋は体の深い部分にある筋肉のため、いわゆる「インナーマッスル」と呼ばれることもあります。
インナーマッスルとはどこ?鍛えるメリットと4つのエクササイズ
腸腰筋は姿勢を保つはたらきがある
腸腰筋は腰周りについていることから、上半身と下半身をつないでいるめずらしい筋肉です。そのため腸腰筋には、「きれいいな姿勢を保つ」という重要なはたらきがあります。
立っているときや座っているときに骨盤が倒れないようにしながら、背骨の本来の形であるS字カーブを維持しています。
また、腸腰筋は姿勢を保つ以外にも、太ももを上げるはたらきがあります。歩く・走るときに足を前に振り出す動きをサポートすることで、スピードが出やすくなります。
腸腰筋が衰えると姿勢の崩れにつながる
上半身と下半身をつないでいる腸腰筋は、衰えたり硬くなったりすると、骨盤や背骨の安定性が低下して、姿勢の崩れにつながります。姿勢が崩れることで、お尻が垂れる、お腹がぽっこりするといった体型維持や、腰痛が出やすくなるなどの不調につながります。
このように、腸腰筋の衰えはスタイルに影響を与えるだけでなく、日々感じるさまざまなプチ不調にもつながります。
このようなお悩みや不調を感じたら、腸腰筋が衰えている、あるいは硬くなっていることを疑ってみましょう。もちろんすべてが腸腰筋のせいとは限らないので、別の原因を考えることも大切です。
腸腰筋の痛みは同じ姿勢を長時間とることが原因
腸腰筋が衰えている人の中には、股関節の部分に痛みがあらわれることがありあります。特に股関節を曲げたり、姿勢を伸ばしたりしたときに痛みを感じることが多いのではないでしょうか。
腸腰筋に痛みが出るおもな原因として、股関節を曲げた状態で長時間同じ姿勢をとっていることがあげられます。たとえばデスクワークで長時間イスに座っていると、腸腰筋が固まりやすくなり痛みが出てきます。
また、脚を曲げながら横向きに寝ていることでも腸腰筋が硬くなりやすく、伸ばすときに痛みが出ることもあるでしょう。
腸腰筋の痛みを予防するためにも、ストレッチでほぐし、トレーニングで鍛えることが大切です。
腸腰筋の硬さチェック
長時間の座りっぱなしで腸腰筋が硬くなると、痛みが出るだけでなく姿勢もますます悪くなります。
まずは自分の腸腰筋がどれくらい硬いのかセルフチェックをしてみましょう。次の方法で確認してみてください。
【腸腰筋の硬さチェック】
- あお向けになる。
- 両手でひざ裏に手をかけて片脚を持ち、ひざを胸に近づける。このとき、もう片方の脚は真っ直ぐ伸ばす。
真っ直ぐに伸ばしている脚のひざ裏が床から離れた場合は、腸腰筋が硬くなっているといえます。
腸腰筋を鍛えるメリット
硬くなった腸腰筋は、まずほぐして常に柔らかく保っておくことが大切です。ほぐした後は、うまく使えるように鍛えることで、不調改善などのさまざまなメリットがあります。次からくわしく解説します。
肩こりや腰痛が軽減する
腸腰筋は骨盤や背骨を支える役割があり、鍛えることできれいな姿勢を維持しやすくなります。常にいい姿勢をキープできれば、肩こり・腰痛が軽減するだけでなく、ヒップアップにもつながります。そのため腸腰筋は、女性らしさを保つためには欠かせない筋肉といえるでしょう。
また、良い姿勢をキープして、肩こりや腰痛がラクになれば、毎日の生活で溜まる疲労感の軽減も期待できます。
スムーズに歩くことができる
腸腰筋は姿勢を保つだけでなく、歩くときにスムーズに足が上がるようにサポートをしている筋肉です。そのため歩きやすさにも関係しています。
腸腰筋を鍛えると、歩くときに股関節回りの筋肉に負担がかかりにくくなります。反対に、腸腰筋が衰えると足が上がりにくくなり、歩くときにつまずいて転ぶ危険性が高まります。
しかも、代わりに股関節回りの他の筋肉が足を上げようするため、歩くたびに負担が大きくなるのです。腸腰筋をうまく使えれば足が上がりやすくなり、スムーズに歩くことができます。
基礎代謝が高まりダイエットにつながる
腸腰筋を鍛えることは、体の基礎代謝を高めるためダイエットにも効果的です。基礎代謝とは、人が最低限生きていくために必要なエネルギー量のこと。人は安静にしていても心臓を動かす、呼吸をする、体温を一定に保つといったはたらきに必要なエネルギーを消費しています。
基礎代謝が高いとエネルギー消費量も多くなり、その分太りにくくなります。筋肉は基礎代謝全体の約20%を占めており、他の臓器や組織よりも比率が大きくなっています。
筋肉量は、何もしていなければ年齢とともに自然と落ちて、基礎代謝が減ってしまいます。しかし筋肉量が増えればその分基礎代謝は高くなるため、腸腰筋を鍛えることでダイエットの効率も高まるというわけです。
もちろん、基礎代謝を高めるためには腸腰筋だけでなく、他の筋肉も鍛えることが有効です。その結果、より高いダイエット効果が期待できます。
腸腰筋をほぐすストレッチ
腸腰筋をうまく鍛えるためには、まず筋肉をほぐして硬さを取り除く必要があります。ここでは腸腰筋をほぐすストレッチ方法をご紹介します。
あお向けで行う方法
一番楽にできるのがあお向けで行う腸腰筋のストレッチです。腸腰筋が硬いと思ったら、まずはこの方法を試してみましょう。先ほど解説した「腸腰筋硬さチェック」と同じやり方で行います。
【やり方】
- あお向けになる。
- 両手でひざ裏に手をかけて片脚を持ち、ひざを胸に近づける。このとき、もう片方の脚は真っ直ぐ伸ばす。
このあお向けで行うストレッチは、伸ばした方の脚の腸腰筋をほぐすのに効果的です。腸腰筋が硬いと伸ばした脚のひざ裏が浮いてしまいます。その場合は片手でひざをおさえると浮きにくくなり、ストレッチの効果が高まります。
また、ひざを胸に近づけるときは背中を丸めずに、しっかりと床につけるのがポイント。曲げた方の股関節に痛みが出てしまう人は、無理に曲げようとせず、違和感の出ない範囲で行ってください。
あお向けのストレッチはベッドの上でも行うことができるので、寝る前の習慣としてもおすすめです。
立って行う方法
同様の腸腰筋ストレッチを、立って行うこともできます。あお向けのストレッチで股関節が痛くなる人は、イスもしくは机の前に立ち、こちらの方法で行うことをおすすめします。デスクワークの休憩中やテレビを見ているときなどに気軽に行ってみましょう。
【やり方】
- イスや机の前に立ち、その上に両手を置く。
- 片方の足を後ろに引く。引いた側のひざを真っ直ぐに伸ばしたまま、20秒間キープする。
- 足を入れ替えて、反対側も同様に。
立って行うこのストレッチでは、後ろに引いた足の腸腰筋を伸ばすことができます。アキレス腱を伸ばすストレッチと同じような動きをイメージしましょう。ストレッチを行うときは、背中を丸めずに、背筋を伸ばしながら行うのがポイント。
腸腰筋を鍛えるトレーニング
腸腰筋のストレッチは、筋肉の痛みや硬さを取り除くために行われる方法です。一方腸腰筋のトレーニングは、衰えた筋肉を鍛えて、うまく活用させます。腸腰筋に痛みや硬さがある場合はストレッチを、ない場合はトレーニングからはじめてもOKです。
あお向けで行う方法
あお向けで行う腸腰筋のトレーニングは、ベッドの上でストレッチを行った後、そのままの体勢で行うのがおすすめです。
【やり方】
- あお向けになり、両手を床につける。
- ひざを伸ばしたまま両足をそろえて上げる。
- 両足を真上まで上げたらゆっくり下げる。5回×3セットを目安に、両足の上げ下げを繰り返す。
このトレーニングは腸腰筋だけでなく、腹筋も鍛えることができ、ぽっこり下腹対策にも効果的です。両足同時に上げるのがむずかしい場合は、片足ずつでもかまいません。そのとき反対側のひざを立てておくと、足が上がりやすくなります。
座って行う方法
イスに座った状態で行う腸腰筋のトレーニング。あお向けよりもやや筋力が必要なため、あお向けのトレーニングが慣れてきたら行ってみましょう。
【やり方】
- 背もたれのないイスに座り、両足を浮かせる。背もたれのあるイスの場合は向きを変えて座り、両足を浮かせる。
- 両手は胸の前でクロスして、ペダルをこぐように両足を交互に上下に動かす。10回×3セットを目安に行う。
座って行うこのトレーニングも、あお向けのときと同様に、腸腰筋と腹筋をどちらも鍛えることができます。動くときに体がふらつきやすい人は、座面につかまりながら行うと、安定しながらトレーニングを行えます。
ペダルをこぐような動きがきつい場合は、交互に太ももを上げ下げする運動だけでも効果的です。
立って行う方法
続いて、立って行う腸腰筋のトレーニング。あお向けや座った状態の運動よりも下半身の筋肉を使いやすい動きです。腸腰筋だけでなく、下半身の筋肉も鍛えたい人におすすめ。階段や踏み台を使って、次のような流れで行います。
【やり方】
- 階段もしくは踏み台の前に立つ。
- 踏み台昇降の動きと同じように、右足→左足の順で台の1段目を上る。
- また右足→左足の順で台を降りる。
- 2〜3の足の順序を交互に変えながらリズム良く続ける。これを20回×3セットを目安に行う。
このステップトレーニングは、単純な動きですが腸腰筋以外にも下半身全体の筋肉を鍛えられます。慣れてきたら視線をなるべく前方向に向けて、姿勢を真っ直ぐ保ちながら行ってみましょう。
今回紹介したトレーニングの回数は、あくまでも目安です。運動があまり得意ではない人や久しぶりの人は、最初から無理をせず、自分の体力にあわせて回数を調整するようにしましょう。
まとめ:腸腰筋はスタイルキープと健康の要
腸腰筋は上半身と下半身の間にある重要な筋肉であることをご紹介しました。腸腰筋はきれいな姿勢を保つはたらきがあります。
長時間のデスクワークなどで硬くなった腸腰筋は、ストレッチでほぐし、ご紹介したトレーニングで鍛えることが大切。腸腰筋を鍛えることで、良い姿勢をキープでき、肩こりや腰痛の軽減、お尻の垂れ防止など、さまざまなお悩みの改善につながります。
今日からストレッチやトレーニングを行って腸腰筋を鍛え、いつまでも若々しい体をキープしましょう。