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あなたは、がんに罹った時「痛み止め麻薬」を使いますか? 使いませんか?

がんに罹った時、痛みを取る治療薬を「医療用麻薬」と呼びます。この医療用麻薬についての誤解が多いために、せっかくの痛み止めを使う人が少なく、治療中のQOL(生活の質)を落としているのだとか。 その実態を紹介するセミナーに参加し、治療用麻薬の有効性について聞いてきました。

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医療用麻薬

「医療用麻薬」についてのイメージ調査結果は?

まず、シオノギ製薬が行なったアンケート調査の結果が発表されました。
『あなたが、麻薬と聞いてイメージするものをすべてお答えください』
この問いに対して、がん患者さんも一般の方も、ともに「麻薬中毒」という答えが1位になりました。

さらに、一般の方の50%以上が「違法な薬」「薬物乱用防止。ダメ。ゼッタイ」「一度使用しはじめるとやめられない」と答えたのに対して、がん患者さんたちの数字は、45〜48 %と、一般の方々よりも若干低く、薬用という意識があると思われます。
それを裏付けるように「痛み止め」との答えは、一般の方が23.8%なのに対し、がん患者さんは45%。

医療用麻薬

次の設問である『あなたが、医療用麻薬と聞いてイメージするものをすべてお答えください』では、がん患者さんの約40〜50%が「つらい痛みから解放してくれる」「正しく使用すればがんの痛みに効果的だと思う」「正しく使用すれば安心だと思う」と答えていますが、医師から説明を受けているであろうがん患者さんたちであっても、まだ半数ほどしか肯定的なイメージを持っていないということになります。

医療用麻薬

さらに『医療用麻薬とは、モルヒネに代表されるがんの痛みを和らげる薬ですが、あなたは、がんで痛みを感じることになった時、医師に勧められれば、医療用麻薬を使用したいと思いますか』という設問では、一般の方の「使いたい」と「どちらかと言えば使いたい」を合わせて63%なのに対して、がん患者さんは71.4%。

このように“医療用麻酔”を使用したいという声が盛り上がらないことは、患者さんたちのQOL(生活の質)が上がって行かないということにつながるそうです。

医療用麻薬

医師が処方した医療用麻薬は、有効・安全

がん患者さんを支援するNPO法人『愛媛がんサポートおれんじの会』理事長の松本陽子さんによると、医師は患者さんへ緩和治療として“医療用麻酔”の説明をちゃんとしていても、患者さんの多くが「薬は怖い」「なるべく薬は飲まないほうがいい」というテレビや雑誌、時には看護師さんの言葉などを覚えていて、躊躇してしまうというのです。

NPO法人『愛媛がんサポートおれんじの会』というのは、愛媛県内のがん患者とその家族、関係者などが集うサロンで、がん患者さんの生の声を聞いている立場の松本さん自身も、以前は化学療法を受けていた患者さんだったそうです。松本さん自身も患者だった時に、「薬は怖い」という思いから、痛み止めの麻薬を半分にして飲んだそうです。しかし、それでは効果はなく、時間を短くしてまた半分飲んだり……という経験があるといいます。

患者さんによっては「痛み止めを使うことによって苦しむ時間が長くなるとネットで読みました。だから使いたくない」といった間違った知識を鵜呑みにしている方もいるそうです。

「緩和ケア」とは、「病気に伴う心と体の痛みを和らげること」で、がん対策推進基本計画(平成24年6月閣議決定)によってはじめて公式に出た言葉です。患者さんにとっては痛み止めを上手に使えば体が楽になります。しかし、患者さんの家族から「薬をそんなに使って大丈夫?」と言われ、患者さん本人に不安を与えることもあるそうです。

松本さんの次に登壇した星薬科大学薬物依存研究室の特任教授である鈴木勉先生から、違法薬物と医療用麻薬の違いや、正しい知識についての講演がありました。

鈴木先生は、「現在、子どもたちに対して、学校で麻薬、覚せい剤などの乱用防止の教育が行われていますが、それと同時に、医療用麻薬についての教育が必要だ」という考えを話されました。また、医師によって適正に処方され、薬剤師によって処方に基づいて調剤され、服薬指導されている医療用麻薬は、有効であり、安全であるということを知って欲しいと訴えておりました。

医療用麻薬

痛みを取って免疫力を上げ、治療の成功率をアップ

最後に、松本陽子さん。鈴木勉特任先生、医療法人洛和(らくわ)会丸太町病院長の細川豊史(とよし)先生が、セミナーに参加したプレス関係者の質問に答える時間に。

ここで、からことから「医療用麻薬は、治療後、薬に依存することはないのか、クセにならないのか」と質問しました。現代は、がんになっても治る場合や、がんと共存しながら長生きすることも可能な時代。患者さんが医療用麻薬をはじめられない理由には、それが大きなネックになっているのではないかと思ったのです。
鈴木勉先生によると、「病気が治ってからの医療用麻酔をやめるときの切り方が問題。医師が指導し、徐々に、徐々に薬をやめていくと依存することはない」というお話でした。

また、細川豊史先生によると、痛みを取ることは一時しのぎではなく、治療の一環なのだとか。
「最近の研究では、痛みというのは体にとって悪い作用とわかっているのです。痛みがあると食欲がなくなったり、生活が楽しくなくなったり、眠れなかったりしますよね。それだけでも体にとっては大変なストレスで、免疫力を下げるということがわかってきています。また、眠れないと痛みの感じ方が強くなるという研究データもあります。そのために、がんと診断された時にもしも痛みがあれば、痛みを取りながら治療をするということが、治療の成功率を上げるということがわかってきているのです」

つまり、治療の成功率を上げるためにも痛み止め(医療用麻薬)を使い、治療の途中から、痛み止め薬を徐々にやめていくよう、医師の指導を受けることが必要ということです。そして、そういったことを多くの人に知ってもらうことが大切なのです。

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