痛い、何度もできる…「口内炎」を防ぐビタミンB群摂取のコツ
栄養に関する研究で世界をリードするDSM社の“ビタミン博士”こと乾泰地さんが、栄養が深く関わっている不調について教えてくれるこの連載。第3回のテーマは、「口内炎」です。口の中を噛んでしまったときや、疲れが溜まるとできてしまう口内炎。そんな口の中のトラブルには「ビタミンB」がカギに。原因や摂取のコツをご紹介します。
目次
原因は、口の中のバランスの崩れ
痛くて食事が摂りづらく、治るまで不快な口内炎。そんな口内炎ができるのはなぜだと思いますか?
口の中は、粘膜に覆われています。粘膜がその下にある組織を保護する役目を果たしており、常に代謝によって細胞が入れ替わることで口の中を健康に保っています。肌のターンオーバーと同じですね。
粘膜は、外から刺激があっても自ら修復する力を持ち、常に一定の厚さを保っています。外からの刺激とは、口内を噛んでしまうことや、歯磨き粉の刺激、刺激物(食べ物)などのこと。これらが粘膜を壊す要素となり、口内炎の大きな原因に。自ら修復する力と、壊す要素のバランスが崩れると、刺激を受けた部分の粘膜が薄くなり、下の組織が露出して痛みが出ます。これが口内炎の始まりです。また女性は、ホルモンバランスの乱れも関係します。
ビタミン不足も原因のひとつ
口内炎になるかならないかは、そのときの体の状態も関係します。体内がビタミン不足になると、口内の粘膜を保護・修復する機能が働かず、小さな口内の傷が治らずに広がり、口内炎につながるということもあります。口内炎を作らないためには体調の管理も大切です。
ビタミンB群の摂取がおすすめ
では、口内炎を防ぐにはどんな栄養素を摂ったらいいと思いますか? 答えは「ビタミンB群」です。中でも、ビタミンB2は、粘膜の保護に役立ちます。不足すると粘膜の修復機能が低下し、口内炎になりやすくなります。口内炎以外にも、唇の両端に炎症が起こる「口角炎」や、唇のひび割れもビタミンB2の欠乏によって発生します。
さらに、粘膜保護や皮フの代謝には、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンB9(葉酸)も重要です。ビタミンB群は、口まわりのすべての健康を保つ代表とも言える栄養素なのです。
ちなみに、B群以外だとビタミンAも大切。ビタミンBが粘膜を新しく生まれ変わらせるのに対して、ビタミンAは粘膜そのものを修復していきます。
それでは、最も欠かせないビタミンB2を、効率よく摂取するにはどうしたらよいのでしょうか?
ビタミンB2の多い食べ物は?
30代女性のビタミンB2の平均摂取量と、厚生労働省の摂取基準量を比べると下回っています。ビタミンB2は、豚レバーやうなぎ、焼きのり、アーモンド、乾燥まいたけや乾燥しいたけなどに豊富に含まれています。
ただし、これさえとっていれば口内炎にならないというわけではありません。なるべくたくさんの食品を摂り、バランスを考えて食事をすることが基本です。
ビタミンB群を多く含む食材を紹介します。
●ビタミンB2
豚レバー
茶葉
うなぎ
焼きのり
アーモンド
乾燥まいたけ
乾燥しいたけ など
●ビタミンB6
バナナ
にんにく
パセリ
玄米
マグロ
納豆 など
●ビタミンB12
豚肉(特に豚レバー)
牛レバー
鮭
いわし
貝類
すじこ
海藻類 など
予防には「塩水うがい」が効く
口内炎は、口の中の細菌やウイルスの影響でも起こります。そこでおすすめなのが、「塩水うがい」です。塩には殺菌作用があり、塩水にすると細菌やウイルスを洗い流してくれる、口内を清潔に保ちます。コップ一杯に塩ひとつまみを入れて水をそそぎ、ブクブクうがいをしましょう。口内炎ができていても、ひとつまみを溶かした濃度であれば問題ありません。大きさによってしみたり、ピリピリしたら控えましょう。
できやすい人は歯磨き粉にも注意!
実は口内炎は、歯磨き粉にも注意が必要です。その理由は、多くの歯磨き粉に含まれている界面活性剤の「ラウリル硫酸ナトリウム」の刺激です。刺激が強く、口内炎の発生に関係すると言われています。
この「ラウリル硫酸ナトリウム」は、粘膜を保護している「ムチン」という物質にくっついて性質を変えます。口内の組織を、粘膜が伸びてまんべんなくカバーしていたのに、クシャッと丸められて中の組織が露出してしまうのです。すると粘膜の保護力が弱まり、口内炎を起こす確率がアップ。体調が悪いわけではないのに度々口内炎ができる人や、原因が分からない人は、歯磨き粉を見直してみましょう。
体の調子を整えよう
ビタミンB群を意識した食事を心がけて、歯磨き粉に注意する他に、口内炎予防に大切なのは睡眠とストレスケア。十分な睡眠時間を確保して、ストレスを溜めない生活を送ることが口の中を健康に保つでしょう。
1~2週間以上続いたら病院へ
日本口腔外科学会の公式サイトによると、口内炎は何もしなくても1~2週間で治るといわれています。それ以上たっても治らない場合は、病院へ行くことをおすすめします。また、10ミリ以上の潰瘍の場合は口内炎ではない可能性があります。他の病気がひそんでいる場合もあるので長引くときは、早めに医師に診てもらいましょう。
イラスト/斉藤明子
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