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池田先生サムネ

医師として女性のさまざまな生き方を支える|名医図鑑#8

「海と空クリニック京都駅前」は女性の健康をトータルサポートするクリニックです。院長の池田裕美枝先生が目指すのは、患者さんが自分を大切にできる治療。女性のためのチャレンジを続ける活動の原点をうかがいしました。(取材日 2025年6月6日)

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女性の生き方と健康に興味を持って|池田裕美枝先生

池田先生
池田裕美枝:京都大学医学部卒業。市立舞鶴市民病院、洛和会音羽病院にて総合内科研修後、産婦人科に転向。2023年より、海と空クリニック院長に就任。NPO法人女性医療ネットワーク理事長。

医師を目指したきっかけは?

父親も兄も医師で、幼い頃から医療は身近なものでした。高校生のときに、悲しいと感じると涙が出る体の仕組みに興味を持ち、医学研究も面白そうだなと医学部へ進みました。最初は研究者になるつもりでしたが、病院実習で患者さんと接するなか、患者さんの人生に関われる臨床医に魅力を感じるようになったんです。

女性のヘルスケアを専門にした理由は?

私が大学を卒業する2003年頃に、アメリカ発祥の女性内科外来が日本にも増え始めたことが大きいですね。祖母と母と私では、人生における女性の役割が変化していて、それに伴い女性が抱える疾患も変わってきている。医師として女性の生き方をサポートしたいと、女性医療を行う総合診療科へ進みました。

女性を取り巻く問題に気づき、産婦人科医に

池田先生

産婦人科へ転向したのはなぜですか?

アメリカでは総合診療科の中に女性診療科があるので、総合診療科へ進めば当然、女性の体を診られると思っていました。ところが、当時の日本では、女性の体は産婦人科が診るもの、という暗黙のルールがあり、内診をする先生はほとんどいませんでした。そこで、1年ほど産婦人科で内診を学ばせてもらうことにしたんです。

産婦人科医はいま現れている症状を治療するのが仕事ですが、私は問診を重視する総合診療科出身なので、どうしてもいろいろと聞いてしまうんです。たとえば、妊娠中に体重が倍になってしまった妊婦さんに対して「食べ過ぎないように注意してください」と指導するだけでなく「何を食べているのか」「どういうときに食べてしまうのか」というところまで聞いていきます。すると、そもそも3食きちんと食べたり、ごはんとおかずを一緒に食べる概念がない家庭で育ったことが分かってくる。また別の方は、経済的に自立できていないので、パートナーを引き留めておくために妊娠しては人工中絶を繰り返している。そういった問題を抱えている女性たちを放っておけず、産婦人科医へ転向しました。

海と空クリニックとの出会いは?

その後、英国の大学院で「リプロダクティブヘルス・アンド・ライツ」という、自分の体は自分のものであるという権利について専攻し、京都の公衆衛生大学院の院生の時に「KYOTO SCOPE」というプロジェクトを立ち上げました。社会的な困難を抱えている女性たちに対して医療ができることはすごくわずかですが、病院の一歩外へ出ると、彼女たちをサポートしてくれる福祉サービスはいろいろある。目の前の女性たちと福祉サービスをつなぐことができればその方の人生が少し変わるかもしれないし、私たち医療従事者の負担も軽減することができると考えました。

大学院卒業後も「KYOTO SCOPE」の活動を続けていくには、大学病院や勤務医へ戻るのは難しい。今後の進路に迷っていたときに出会ったのが、女性泌尿器科医の二宮典子先生でした。新しく女性のためのクリニックを開業されるということで院長を探しておられたので、ぜひとお引き受けしました。

自分の体と向き合い、自分を大切にできる治療

クリニックの特長は?

私の専門である産婦人科と内科に加え、これまで十分に見ることのできなかった泌尿器科の3つを柱とした診療を行っています。特に25歳以下の若い世代と、更年期世代の患者さんが多いですね。性機能障害に関する相談にも対応しており、内診時の痛みに配慮した診療を心掛けています。

診察にあたって大切にしていることは?

患者さんが自分の体の状態を理解し、主体的に治療を選択できるようサポートすることを重視しています。自分で決めるということに慣れていない方もいますが、選択肢があるということが大切だと思うんです。女性が自身の体と向き合い、自分を大事にできるようになる治療を目指しています。

記憶に残っている患者さんはいますか?

研修医時代、卵巣がんで何度も抗がん剤治療を受けている患者さんが、薬の影響で便秘に悩まれていたんです。下剤を飲んでも効果がなく、看護師さんがお腹のマッサージをしたり、機械でお腹を温めたり、上司にもいろいろ相談して、あの手この手を尽くしました。するとある朝、その患者さんが目をキラキラさせながら「便が出たの!」と報告してくれました。すっきりした顔を見られたことはもちろん、みんなで力を合わせてがんばったことが成功したのがうれしくて、いい仕事だなと思いましたね。

今後の展望は?

今、大学でいくつか講義を持っていて、その学生さんたちを集めて「ユースクリニック」という活動を行っています。時には「KYOTO SCOPE」関連の施設へ出向き、彼女たちが主体となった同世代の心や体の相談会です。自分とはまったく違う境遇にいる同世代の力になろうする彼女たちの姿は本当にパワフルで、その活動を長く支援していきたいと考えています。それと「KYOTO SCOPE」は昨年、グッドデザイン賞をいただいたので、他の地域にも広げて事業として発展させられたらいいですね。

先生のリフレッシュ法を教えてください

大切な人と良い時間を過ごし、その瞬間を心穏やかに感じることが最もリフレッシュできる時間ですね。寺社仏閣巡りもリフレッシュ法のひとつで、クリニックに近い東寺はお気に入りの場所です。

海と空クリニック京都駅前|池田裕美枝先生

海と空クリニック京都駅前
京都府京都市下京区真苧屋町197 ブーケガルニ5階
アクセス:JR京都駅より徒歩4分
TEL:075-344-0303
診察時間:10:00~13:00、14:30~17:00
日祝休
https://ninomiya-lc.jp/umisora/

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