体調を崩しやすい季節の変わり目に!ゆったり過ごす「春の養生」を|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「春の養生」がテーマ。季節の変わり目に起こりやすい不調の原因とセルフケアについてご紹介します。
目次
春は不要なものを体の外に出す季節
自然界では冬になると花木が枯れ、春になると新しい芽が誕生します。人間の体も同じように、冬の省エネモードから、春は活動的になり体の内側から外側に“発散する”時期。東洋医学では、体の中の古いものやいらないものを、外に出していくのが春の時期といわれています。
春に体調を崩しやすいのはなぜ?
気温が上がり過ごしやすくなる春ですが、意外と体調を崩しやすい時期でもあります。なんとなく調子が悪い、風邪がなかなか治らないなど、ズルズル長引くプチ不調に悩まされていませんか。春に体調を崩しやすい理由は4つあります。
冬の“がんばりすぎ”が春の不調に
東洋医学では、前の季節の過ごし方が次の季節の体調にあらわれると考えられています。つまり、春の時期の体調は、11月・12月・1月の冬の時期の過ごし方が関係しているということ。イベントの多い年末年始は、仕事やプライベートも忙しく、体を酷使したはずです。その冬のつけが春に回ってくることで、体調を崩しやすくなるのです。
春の「風邪(ふうじゃ)」の影響によるもの
春は風邪(ふうじゃ)といわれる邪気の影響を受けやすい季節とされます。春一番といわれるように風が強く吹く春には、風邪(かぜ)や花粉症やめまい、じんましん、かゆみなど風邪(ふうじゃ)によるトラブルが増えやすくなります。特に暖かくなり、つい薄着になると背中や首などの風邪(ふうじゃ)が入りやすい場所が露出して、体調を崩しやすくなります。
家に引きこもりすぎる生活で体調が不安定に
東洋医学の考え方で、春は「木」と関係が深いとされています。木が上や外側に向かって枝葉を広げていくように、春は人間ものびのびと過ごすことが健康につながります。そのため家にこもってばかりいたり、ストレスをため込んで発散しないでいると、心身共に不安定になります。
「肝血(かんけつ)」不足が心の不調に
春は五臓六腑の「肝(かん)」とも関係があります。肝は代謝や自律神経のバランスを保つなど、生きていくための重要な働きを担っています。しかし、睡眠不足やスマホ・パソコンの使いすぎなどで、肝の血=肝血(かんけつ)が不足。すると不安や落ち込み、イライラなど、メンタルの不調があらわれやすくなります。
プチ不調をすっきり! 今日からできる「春の養生」
「春はなんとなく体調が悪い」「不調がすっきりしない」。そんな人は、ご紹介する春の養生を取り入れてみてください。養生は、今の時期だけなく次の季節を不調のない体で過ごすためにも大切です。夏バテしないタフな体をつくるためにも、今からしっかり体を整えましょう。
【食養生】春は苦味・酸味・甘味をバランスよく食べる
春は体の中のいらないものや古いものを排出するために、「苦味のある食べ物」を食べましょう。特に、春の時期しか食べられない旬の野菜や山菜は、冬にためた毒素をデトックスするのに最適です。
また、「酸味のある食べ物」と「甘味のある食べ物」も良い働きをします。酸味は春にがんばる肝のサポートをするものが多く、甘味は気血を補い、緊張をゆるめてくれます。春は、「苦味・酸味・甘味」をバランスよく取ることが食養生のポイントです。
苦味のある食べ物…ウド、よもぎ、ゴーヤ、どくだみ、アスパラガス、ごぼう、芽キャベツ、ミツバ、緑茶など
酸味のある食べ物…梅干し、お酢など
甘味のある食べ物…白米、豆類、卵、じゃがいも、焼き芋、たけのこ、いちごなど
【セルフケア】髪の毛をゆるめて服装はゆったり
春はのびのび過ごすのが良いとお伝えしました。体が窮屈だと気や血が滞り、ますます不調が強くなります。髪の毛はゴムで結んだりまとめ髪にしたりせず、おろしてゆるめます。どうしても結ばないといけない場合は、家に帰ってきたらブラッシングをしてゆるめましょう。
服装は、スキニーパンツやタイトスカートなどのピタッとした服より、ワンピースなどのゆったりした服が春には最適。「ギュッと」せずに、「ふわ~」っと体を解放するイメージで過ごしてみてください。
【セルフケア】自然の中を散歩して心身ともにゆったり過ごす
花木が芽吹く春は、自然の中を散歩して過ごすのが最高の養生です。家にこもってばかりではなく、天気のいい日は外に出て軽く体を動かすことで、滞った気や血が巡り、心身のバランスが整います。風や香り、音などを五感で感じることもストレス発散に。春は焦らない、急がない。いつもより落ち着いて、ゆっくり過ごすことを心がけましょう。
「春の養生」に効果的なツボ
気の流れをスムーズにする「期門(きもん)」は、春の養生にぴったりのツボ。ピンポイントでツボの位置がわからなくても、大まかに肋骨のあたりをさすればOK。さするだけで体がゆるんできます。ストレスがたまっていると、このあたりが張ってくることがあります。
期門(きもん):第6肋骨と第7肋骨の間で、乳頭から指4~5本分下の位置。
押し方:指の腹で軽く押すか、このあたりを両手で上下にさすります。
今月の養生ポイント:天気が良くても油断禁物! 春はすぐに薄着にならないこと
中医学の養生に「春捂秋凍(しゅんごしゅうとう)」という言葉があります。これは、「春はすぐ薄着にならない、秋はすぐ厚着しない」という意味。春も秋も服装に気を付けて、体を徐々に気温に慣らしていくことが体調管理につながります。特に春は、風が強く首や足首、手首などから「風邪(ふうじゃ)」が入りやすくなります。天気がいいからといって薄着で出かけると、風で体が冷えてしまいます。羽織るものや首に巻くものを持って外出しましょう。
また、春は新しいことを始めるのにとても良い時期です。運動を始める、早起きを始めるなど、何か一つでも養生につながる習慣を始めてみませんか。心と体を整える春の養生で、季節の変わり目を元気に過ごしましょう。
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ
[ 監修者 ]