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ウォーキングしている女性

「更年期」の不定愁訴をラクにするには?東洋医学のセルフケアで改善|田中友也さん 季節の養生法

神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は「更年期」がテーマ。東洋医学のセルフケアで不定愁訴を改善して、心身ともにラクに過ごしましょう!

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女性は「7の倍数」の歳に体調変化が起こりやすい

女性は50歳頃に閉経を迎えます。この閉経前後の約10年間、女性ホルモンが急変動することにより、更年期症状があらわれます。症状はほてりやのぼせといったホットフラッシュから、疲れやすさ、肩こり、メンタル不調まで多岐にわたり、なんとなく調子の悪さが続く“不定愁訴”が起こります。

東洋医学では、女性は「7の倍数」の歳に体の変化が起こりやすいとされています。そのため閉経に向かう49歳頃は、今まで以上に体をいたわることに目を向けるべきタイミングなのです。

東洋医学で更年期は「腎・肝・心」が衰える時期

ホットフラッシュがつらい女性

更年期は、東洋医学で内臓をあらわす五臓=肝・心・脾・肺・腎のうち、「腎」が弱ることで起こります。腎は生命エネルギーのもとであり、成長や発育、生殖を司り人の一生を支えています。腎のエネルギーはこの世に生まれたときが最も多く、加齢とともにだんだん消耗していきます。

また腎は、体の“陰と陽”のバランスをコントロールしています。陰には体を冷ます(クールダウンさせる)力、陽には体を温める力があります。更年期にさしかかり腎の働きが弱ると、この陰陽のバランスが崩れ、のぼせや発汗、反対に冷えてつらいといった体温調節の不具合が起こります。

さらに、腎が弱ることで、腎と関係が深い「肝」と「心」の働きも衰えはじめます。肝は自律神経の働きを保ち、心は意識や思考、睡眠などを司っています。

そのため、イライラしやすい、落ち込みやすい、思考力の低下、不眠などがあらわれやすくなります。このように更年期は、「腎・肝・心」が次第に弱ることで、心と体の両方に不調が起こります。

更年期をラクに過ごすための「東洋医学的セルフケア」

更年期は、症状が重い人、軽い人、症状なく更年期が終わった人など、さまざま。腎や肝、心がどれだけ元気かによって個人差があらわれます。仕事や家事で体を酷使している、ストレスが多い生活が続いている、慢性的に睡眠が不足しているといった人は、腎・肝・心が早く衰え、症状も重くなるでしょう。

また、腎の強さは、生まれたときに両親から受け継いだエネルギーが関係しています。更年期をもっとラクに、元気に過ごすためには、腎・肝・心をいたわるセルフケアが大切。次からご紹介する食事や生活習慣を実践してみてください。

「腎」を元気にする食養生と生活アドバイス

東洋医学で腎を元気にするには、「黒い食べ物」が良いとされています。黒ゴマ、黒豆、黒きくらげや、ひじきなどの海藻類のほか、山芋やオクラといったネバネバ食材も生命エネルギーアップに効果的です。

また、腎の衰えを予防するには、体のうるおいを保つことも大切。一見体によさそうですが、大量の汗をかくホットヨガやサウナは、腎が弱った更年期世代には逆効果。のぼせやホットフラッシュがある人は控えたほうが良いでしょう。温めすぎは良くないですが、腹巻や靴下などで体を冷やさない工夫はおすすめです。

黒い食べ物

「肝・心」を元気にする食養生と生活アドバイス

肝を元気にするには「香りの良いもの」を。例えば、オレンジやみかん、グレープフルーツ、レモンなどの柑橘系フルーツ、パクチー、パセリ、クレソン、セロリ、ミント、しそ、みょうが、ハーブティーなど、香りを嗅いで心地いいと感じる食べ物やドリンクを取り入れましょう。

心は、血を材料に働いています。そのため、牛肉、豚肉、鶏肉といった肉類、ハツ、卵などの「血を補う食べ物」がおすすめです。血を補う食べ物は、肝も同時に元気にしてくれます。

また、肝と心、両方を大きく消耗してしまうのがストレスと睡眠。ストレスをなくすことは難しいですが、人と話す、一人時間を持つなど、気分転換やリラックスできる時間をつくってください。更年期世代は、睡眠不足にも気を付け、肝と心をいたわりましょう。

更年期対策に効果的なツボ

食事や生活を整えるほかに、更年期対策としてツボ押しも有効です。すきま時間にツボ押しを習慣にすれば、弱った腎が元気になるでしょう。

腎を元気にするツボ:太渓(たいけい)

ツボ 太渓

太渓(たいけい):アキレス腱と内くるぶしの間のくぼみにあるツボ。

押し方:深呼吸しながらイタ気持ち良い強さで、息を吐きながら押し、吸うときに力を抜く。これを数回繰り返します。ツボ周辺を触って冷たければお灸もおすすめ。

更年期全般に効果的なツボ:三陰交(さんいんこう)

ツボ 三陰交

三陰交(さんいんこう):内くるぶしの頂点から指幅4本分上の場所。※妊婦の方は「三陰交」のツボ押しは避けましょう。

押し方:足首の内側をつかむようにして、親指の腹でじんわり気持ち良い強さで押します。お灸もおすすめ。

つらいときは漢方薬に頼る手も

セルフケアを続けても症状が改善しないときは、漢方薬を始めてみるのも一つの手段です。更年期の体は、「温める・冷やす」のバランスが乱れていることが原因。体のうるおい=水が不足しているため、それを漢方薬で補うと症状がラクになるでしょう。更年期世代にあらわれやすい陰陽のアンバランスを漢方薬で整え、本来の快適な体に近づけていくことができます。

今月の養生ポイント:更年期をハッピーに過ごすには“推し活”がカギ

更年期世代でも不調が少なく元気な人に共通しているのが、自分の大好きな趣味があること。例えば、アイドルやアーティストなどの“推し”がいる人は、推し活に積極的で、ものすごいエネルギーがありますよね。

東洋医学で、好きなことをして過ごす時間は、気の流れを良くして、肝の働きをのびのびさせると考えられます。更年期のさまざまな不調は自律神経のトラブルともいえます。趣味の時間を持つことは、自律神経を整える効果があるといえるでしょう。

趣味は、一つでも良いですが、できれば複数持つことをおすすめします。「登山が趣味だったけどひざが痛くなってできなくなった」など、加齢や体調不良などを理由に断念せざるを得ないことがあるかもしれません。そんなときに、アウトドアとインドアの両方の趣味があると、いつまでも心豊かに過ごせます。そして更年期は、“他人優先”をやめて“自分優先”にシフトする時期。自分の心が一番ハッピーになれる生活を送り、心も体も快適に過ごしましょう。

取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ

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