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ホームドクター11

心の病を生まないために安心して発言できる職場作りを┃ホームドクター(11)

メンタル疾患の原因の7割は職場の人間関係。多くの患者と対話するなかで問題は人でなく、組織にあると気付いた医師がいます。“職場の在り方を変えるのが先決”と活動する精神科医・伊井俊貴先生が進む道とは―。

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「からだにいいことホームドクター」とは?
「この健康法は自分に合っているのかな」「どうしてこんな不調が起きるんだろう」など、自分ではわからないけれど病院に行くほどではない“セルフケア以上、診療未満”のお悩みを、各科の名医と一緒に解決していく、健康応援プロジェクトです。

「心優しい人」を手助けするため、勤務医から起業を決意

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伊井俊貴先生

伊井俊貴先生が精神科医になったきっかけを教えてください

伊井先生 幼少期から読書が好きで、自然と“人が考えること”や“心”に興味を持ちました。特に精神科医で小説家でもある北杜夫さんの本とその生き方に影響を受け、精神科医を目指すと決意。しかし高校の成績はビリに近く、「医学部なんて無理だ」と。それでも受け身の学業よりも、自ら学ぶほうが自分の力になると信じ、勉強を続けた結果、無事に合格できました。研修医になってからは、当時数カ所しかなかった認知行動療法(思考や行動のクセを把握し、自分の認知・行動パターンを整えることで生活や仕事上のストレスを減らす心理療法)を実施する医療機関に勤務。人の心に触れたくて精神科医になったので、薬ではなくカウンセリングに集中したのは当然の流れでした。

先生が今、精神科医として治療現場にいらっしゃらないのはなぜですか?

伊井先生 6年間在籍した「日本若手精神科医の会」で得た経験などを通じ、自分らしく手助けをする方法を見つけたからです。世界を見れば、精神科医がカウンセリングを主体に行う国もあれば、呪術師とネットワークを築いて人に寄り添うのが仕事という国も。日本では薬の処方が重視されますね。というのも、精神科診療のシステム上、問診は時間の長さにかかわらず保険点数が一律で、治しても治さなくても一緒。診療時間を短くして治さずに薬を処方して通い続けてもらうのが、1番もうかるという皮肉な現実があるんです。さらに、なぜメンタル疾患を抱えるかという根本に目を向けると、原因の7割は「人間関係」です。特に職場では発言力が強い人の声で方針が決まり、その負担が心優しい人にかかる構図が常態化。そして優しい人が心を患うのです。でも、その人は本来何も悪くないし、治す必要がない。本当に必要なのは、対等に話ができる職場環境です。ならば、そうした職場を作る手伝いをすると決め、2018年に独立。今は「心理的安全性」を高める組織作りで、心を病む人を減らす活動をメインに行っています。

「心理的安全性」ってどういうものですか?

伊井先生 「心理的安全性」とは、組織のなかで自分の考えや気持ちを誰に対しても安心して発言できる状態のこと。Google社が「うまくいくチーム」と「失敗するチーム」の違いを検証したことで有名になった概念です。結論を言えば、その違いは“話しやすい雰囲気”か“そうでないか”の1点だけ。立場を超えて社員が話しやすい雰囲気を作るには、形式的に話を聞く時間を設けることではなく、管理職自身の迷い、悩みを含めて“本音を話す”ことが起点。そこから、話せる関係性を作っていくことができます。安心して発言できる環境こそが、心の病を生まない最善策だと知っていただけたらうれしいです。

子どもたちとのオフタイムが心の休息につながります

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自分自身の心の健康も大切にしている。忙しい日常の合間にも、子どもたちと自然に触れることでリフレッシュできるのだとか。

取材・文/江山 彩 協力/メディコレ
(からだにいいこと2022年12月号より)

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