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ホームドクター08

医療技術が進歩しようとも、結局「人の手」が脳を救う┃ホームドクター(8)

普段なかなか知ることのできないドクターの素顔に迫る連載の第8回。今回は、世界屈指の脳神経外科医として難症例の執刀に当たる、鮫島哲朗先生です。

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「からだにいいことホームドクター」とは?
「この健康法は自分に合っているのかな」「どうしてこんな不調が起きるんだろう」など、自分ではわからないけれど病院に行くほどではない“セルフケア以上、診療未満”のお悩みを、各科の名医と一緒に解決していく、健康応援プロジェクトです。

幼心に将来を重ねた医師の道 “自分専用のメス”で病変と対峙

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鮫島哲朗先生

鮫島先生が脳神経外科医を目指したきっかけを教えてください

鮫島先生 病弱な母を見舞うため、幼いころから病院にはよく出入りをしていました。医師や看護師は私を優しく励ましてくれ、自然と先生方のようになりたいと。脳神経外科を選んだのは、救急科での臨床実習がきっかけです。救急搬送された患者さんの検査結果が出るや、救急医から脳神経外科の先生にバトンタッチされ、緊急手術へ。こうした場面で高い専門性をもって治療に当たる脳神経外科医のインパクトは大きく、自分も目指したいと思うようになりました。

脳神経外科は、外科随一の高い技術力を要求されますよね

鮫島先生 脳外科の手術では、脳を直接手で触ることはありません。顕微鏡でのぞきながら、器具を使って腫瘍などの病変をはがす繊細な作業を伴います。処置エリアを適切に見極めて手術工程を組み立てるなど、一定のセンスも求められます。もちろん手元の狂いは許されないので、指先の感覚は重要。だから、手術用具はカスタマイズした自分専用のものを携帯して使っています。

厳しい医療現場では、くじけそうになることはありませんか

鮫島先生 私自身は、ありません。ただ手術が10時間以上に及ぶことはざらで、緊急性も高く、いつでも対応できる体力が必須。私の場合、学生時代にサッカー部で培った体力に自信があります。どこでも寝られますし(笑)。そして、術中は集中していて時間がまったく気になりません。根本的に脳神経外科医に向いているんだと思います。ここ十数年は難症例の執刀が多く、プレッシャーは増すばかり。しかし「苦労した分、得られるものは大きい」と、長年の経験から実感しています。厳しい世界でめげない打たれ強さが、私を支えているんでしょう。

激務とリスクの狭間にあっても挑戦し続ける脳神経外科医に

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50種ほどある鮫島先生専用の手術用具。手先の感覚に合うよう、改良を重ねている。

先生が感じる脳神経外科医の課題はありますか

鮫島先生 難しい症例の手術に挑む若い脳神経外科医が増えにくい環境にあることは、残念に思っています。昔と違って今は術中の映像が記録されており、医療訴訟時の証拠となります。実際は、どのレベルで医療過誤と認定されるのか判断が難しいんですけどね。とはいえ、医療過誤と認められれば、医師としての道が絶たれる。それでもこの現状をリスクと捉えず、挑戦し続ける脳神経外科医が増えてほしいですね。

昨今、医療ロボットの進歩が目覚ましいですが、脳神経外科分野にも影響がありますか

鮫島先生 手術用ロボットの性能は向上し、導入する医療機関が増えています。でも、脳神経外科について言えば、脳病変の処置を許されるのは脳神経外科医だけ。結局は“人の手”なんです。私が執刀する際は、高度な技術を要さない過程でも若手の医師に全て任せることなく、責任を持って最後まで手術を行っています。

ドクターズアドバイス

手術のときは、病院の設備ではなく医師で選んで

鮫島先生 脳神経外科手術は、執刀医の技量がダイレクトに結果を左右します。設備が整う大病院だから安心ということはなく、執刀医が誰であるかが重要です。執刀医に立派な肩書があるかと、手術の腕がいいかは別の話。「病院ではなく、医師を選ぶ」「医師を選ぶ際は、肩書に惑わされない」ように。

取材・文/江山 彩 協力/メディコレ
(からだにいいこと2022年6月号より)

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