「セルフプレジャー」とは、いわゆる自慰行為のこと。自分だけの悦びを見つけられるセルフプレジャーは、今注目のフェムテックのひとつ。気持ちいいだけではなく、心身にうれしい効果をもたらしてくれる行為です。

自分だけの悦びを見つける「セルフプレジャー」

欧米では女性が性をオープンに語る文化があり、セルフプレジャーを積極的に行っている女性は珍しくないのだそう。日本では女性が性を語ることはタブー視される風潮があるものの、近年のフェムテックブームの影響を受け、徐々にセルフプレジャーが浸透しはじめました。

その大きなきっかけのひとつが、女性向けのセルフプレジャーアイテムとして研究開発を行った「iroha」というブランドです。広報の犬飼幸さんは、「自分を慰めるのではなく、自分で自分を悦ばせる行為を楽しんで欲しいという思いを込めました」と語ります。

セルフプレジャーは心身にいいことがいっぱい！

セルフプレジャーには、快感を得る以外にもさまざまな効果が期待できます。産婦人科医の山村菜実さんは、次のように解説します。

「性的興奮を感じると分泌されるオキシトシンには、セロトニンの分泌を促進します。眠りに作用するメラトニンはセロトニンから作られるので、寝つきがよくなります。また、“幸せホルモン”と呼ばれるオキシトシン、セロトニン、エンドルフィンが分泌されることで副交感神経が優位になり、リラックスした気分にもなります」

セルフプレジャーは、美肌づくりにも役立つ

「体全体の血流が促進されて代謝が上がり、ターンオーバーが活発になって若々しい肌になります。また、“美肌ホルモン”ともいわれる女性ホルモンのエストロゲンが分泌され、美肌の実現にもつながりますよ」

さらに、女性特有の不調の改善にも効果があるそうです。

「腟全体が活性化されて卵巣の血流が上がり、エストロゲンが分泌されます。その結果、ホルモンのバランスが整い更年期のつらい症状を改善する効果も期待できます」

罪悪感を持たず、性を楽しんでほしい

セルフプレジャーアイテムのブランド「iroha」は2013年に生まれました。当初は世間から奇異な目で見られることがあったものの、ここ数年で潮目が変わってきたといいます。

「私が入社した2019年頃は、女性向けの媒体さんに『iroha』を提案しても取り上げてもらえませんでした。時にはあからさまに嫌そうな態度をとられ、心が折れて半泣きで会社に帰ることもありました。それだけに、今回の取材は夢のような出来事です。少しずつではありますが、セルフプレジャーが受け入れられてきたことを実感しています」（広報の犬飼さん）

犬飼さんは、広報として「iroha」やセルフプレジャーの情報を伝える際に心がけていることがあるそうです。

「さまざまな理由から、セルフプレジャーに対して抵抗感を覚える方もいらっしゃいますし、そもそも関心がない方もいらっしゃるはずです。ですから、『セルフプレジャーをしよう！』と強くおすすめするのではなく、『セルフプレジャーはしてもしなくてもどちらでもいいんです』というニュアンスでお伝えするように心がけています。セルフプレジャーをすることを選ぶことも選ばないことも自由に選択できるような世の中にしていきたい。そんな想いで『iroha』の広報活動をしています」

セルフプレジャーや医療で腟が健康になると、全身も元気に

セルフプレジャーで腟全体の血流が促進されると卵巣機能が上がってホルモンバランスが整い、ひいては全身が元気になっていきます。また、産婦人科医の山村さんは、女性の健康と医療をつなげた“フェムキュア”を提案している医師でもあります。

「セルフプレジャーで腟の血流を上げることに加え、医療でも腟から全身をケアすることができるんです。たとえば、自分の血液から効果のある成分だけを利用して腟粘膜や腟口に注射する『腟PRP療法』は腟全体のエイジングケアを可能にしますし、腟のゆるみや尿漏れといったお悩みは『腟ハイフ』という治療で解決することができます」

性への興味や性欲は健康の証です。セルフプレジャーや医療の力で腟の健康を促進し、元気な人生を楽しんでいきたいですね。

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雑誌『からだにいいこと』では、「フェムテック」にまつわる連載を掲載。誌面でも、みなさまに役立つ情報をお届けします。

2023年8月号誌面でも、犬飼さん・山村さんのインタビュー記事をお読みいただくことができます。ぜひご覧ください！

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取材・文／熊谷あづさ　イラスト／桃色ポワソン