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寝起きの女性

睡眠の質を上げるコツは?眠りが浅い人がやりがちなNG習慣

しっかり寝ているはずなのに疲れが取れないのは、眠りが浅いからかもしれません。睡眠の質を上げるための食事や生活習慣、眠りが浅い人がやってしまいがちな行動を、睡眠専門医の坪田聡さんに聞きました。

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質のいい睡眠とはどんな状態?

寝ている女性

なんとなくぐっすり眠れていないと感じていても、睡眠の質が高いか低いかは自分では判断しづらいですよね。

次の四つの項目のすべてに当てはまる人は、質のいい睡眠がとれているといえます。反対に当てはまらない人は、睡眠の質が悪いといえます。

  1. 50代未満の人は、「睡眠中2回以上起きない」もしくは「起きてもすぐに眠れる」
    50代以上の人は、「睡眠中3回以上起きない」
  2. 「朝自然に起きられる」もしくは「アラームでスッキリ起きられる」
  3. 熟睡感がある
  4. 日中眠くならない

どれにも当てはまらない人は、生活習慣の改善が必要です。睡眠の質が落ちると、体や心に次のような影響があらわれます。

  • 免疫力が低下して、風邪をひきやすく病気にかかりやすい体質になる
  • 感情のコントロールがうまくできず、すぐにキレる
  • 食欲を抑制するホルモンが減り、食欲を増進するホルモンが増えて、肥満の原因になる
  • 細菌とたたかう力が弱まり、肌荒れしやすくなる
  • 眠っている間に記憶の定着や整理するので、記憶したことを忘れがちになる

深い眠りに入ると、傷ついた細胞を修復させて疲労回復を促す「成長ホルモン」が分泌されます。よく眠れていないと、成長ホルモンの分泌が減るので疲れが抜けにくくなり、不調を感じやすくなります。

睡眠の質だけではなく、睡眠時間の確保も必要です。理想的な睡眠時間には個人差がありますが、平均して6.5~7.5時間眠っている人は、最も死亡率が低いといわれています。(※1)

睡眠の質や十分な睡眠時間は、心や体のコンディションを整えるのに欠かせません。睡眠の質を上げる方法を次から紹介します。

※1…Tamakoshi A, et al. 「Self-Reported Sleep Duration as a Predictor of All-Cause Mortality: Results from the JACC Study, Japan」(SLEEP, Vol.27,No.1,2004)

睡眠の質を上げる栄養素と食事のコツ

睡眠の質を大きく左右するのが食事。ぐっすり眠るための食事は、朝食から始まっています。快眠におすすめの栄養素と食事のコツを紹介します。

朝ごはんにおすすめの栄養素「トリプトファン」

バナナジュース

朝摂るべき栄養素は、必須アミノ酸の一つ「トリプトファン」です。牛乳やヨーグルトなどの乳製品やバナナ、アボカド、肉類、豆類に多く含まれています。

朝トリプトファンを摂ると、昼頃には神経伝達物質「セロトニン」に変わります。セロトニンは、気持ちを安定させて脳の覚醒を高めます。また、夜になると睡眠ホルモン「メラトニン」に変化。メラトニンには眠気を誘う作用があり、自然と眠くなり寝つきがよくなります。

夜ごはんにおすすめの栄養素「グリシン」

ホタテ料理

夜ごはんで摂っておきたい栄養素は、アミノ酸の一種である「グリシン」。えびやホタテ、イカ、カニなどの魚介類に多く含まれています。

グリシンは血流を促進させ、皮膚表面の血管から熱を発散するのが特徴。人は体温が下がるときに眠気が強くなります。グリシンを摂ると、熱の発散効果で体温が下がり、入眠をスムーズにしてくれるでしょう。

寝る前の食事は控えめに

睡眠の質を上げるために、夜ごはんは、朝や昼と比べて軽めにしましょう。仕事が終わってゆっくりできる夜は、朝と昼よりもつい食事量が増えてしまう人も多いはず。しかし理想は、1日の摂取カロリーの1/3以下が目安。

ご飯を食べると、消化するときに体温が上がります。寝る直前に食べると、体温が高いままになり、寝つきが悪く、浅い眠りに。また、体は消化にエネルギーを優先してしまうため、寝ている間十分に細胞を修復することができません。そのため、起きたときに疲労感が残ってしまうことも。

消化にかかる時間を考えると、寝る3時間前には食事を済ませておきましょう。どうしてもお腹が空いて眠れないときは、うどんやおかゆなどの消化にいい食べ物を食べるようにしてください。

睡眠の質を上げる生活習慣

質が高く深い睡眠には、食事の改善だけではなく生活習慣の見直しも必要です。自分の生活に取り入れやすいものからはじめてみましょう。

「リズム運動」で睡眠ホルモンを増やす

歩くお姉さん

日中の適度な運動は、快眠に効果的。運動をすると、脳が深く眠ります。そのため、運動した日は熟睡できるのです。

睡眠の質を上げるためには、1日30分以上、週5回以上の有酸素運動をするのが理想的。難しい場合は、週2回でもOKです。運動はどんなものでもいいのですが、特にジョギングやウォーキングなど、リズミカルに動く「リズム運動」がおすすめです。

リズム運動をすると、心を安定させる神経伝達物質「セロトニン」が増え、夜になると睡眠ホルモン「メラトニン」に変化。メラトニンは、寝つきをよくしてくれる効果があり、眠りをサポートしてくれます。

お風呂は眠る1時間前までに

お風呂は、眠る1時間前までに済ませましょう。お風呂からじんわりかいた汗が一気に体温を下げます。体温が下がるタイミングで眠気が強くなるので、寝る直前ではなく1〜2時間前に入るのがベストです。

お風呂の温度が高すぎると、交感神経が刺激されて眠りを妨げます。40度以下のぬるめのお風呂に10分程度入ると、気持ちを落ち着かせる「副交感神経」が優位になり、リラックスできます。

冬は40度以下だと寒く感じるかもしれません。そのときは、40度を少し超えてもいいので心地よいと感じる温度に調節してください。40度以上にする場合は、寝る1時間前よりも早めにお風呂に入るよう調整しましょう。

寝る前の「入眠儀式」を決めておく

寝室

歯を磨く、トイレに行く、電気を消すなど、寝る前に毎晩やっている習慣を「入眠儀式」と呼びます。いつもと同じ行動をとると、脳がすばやく睡眠モードに切り替わり、寝つきが改善。旅先で眠れない人でも、入眠儀式をすると緊張が取れてぐっすり眠れることがあります。

パジャマに着替えるだけで快眠度がアップ!

おすすめの入眠儀式は、Tシャツやスウェットなどの部屋着ではなく、きちんとパジャマに着替えること。

毎晩パジャマに着替える習慣を作ると、自然に眠りのスイッチが入ります。部屋着よりも肌ざわりがよく、安心感を高めてくれる効果も。また、余計な装飾が少ないので寝返りが打ちやすくなり、部屋着で寝るよりも夜中の目覚め回数が減ることがわかっています。(※2)

パジャマは、しっかり汗を吸って乾きやすい綿やシルク素材で、寝返りの邪魔にならないシンプルなデザインを選びましょう。

※2… ワコールとオムロンヘルスケアの「パジャマと眠りに関する共同実験」(2013)より。

起きる時間を唱える「自己覚醒法」ですっきり目覚める

起きたい時間にアラームを使わず自分の意志で目覚めることを「自己覚醒」といいます。自己覚醒が習慣的にできている人はそうではない人と比べて、日中の脳の働きが活発で居眠りしにくく、夜もぐっすり眠れるといわれています。

ポイントは、眠る前に脳内で強く起床時間を念じること。「○時に起きる」「いまから○時間後に起きる」と具体的な時間を、少なくとも3回は心の中で繰り返しましょう。

「自己覚醒法」は難しいように感じますが、日常的に十分な睡眠が取れている人を調査したところ、1/3〜1/2の人がこれでスッキリ起きられるようになりました。(※3)

※3…『不眠症の科学』(SBクリエイティブ・2011/3/16)坪田 聡 著より。

睡眠の質を上げる寝室の環境作り

眠りが浅い原因は、寝室の環境に問題があるのかもしれません。睡眠の質を上げるために、快適な睡眠環境の作り方を紹介します。

寝室は「真っ暗」か「常夜灯」程度に

寝るときは光の刺激を避けるため、カーテンを閉めて寝室の明かりを真っ暗にするのがおすすめです。電気をつけたまま眠ると、睡眠ホルモン「メラトニン」が減り睡眠の質が下がります。

真っ暗が苦手で眠れない人は、常夜灯をつけてもOK。天井からの光よりも、足元を照らす暖色系のフットライトの方が光の刺激が少なくおすすめです。

寝室の照明は、寝る1時間くらい前から暗くするのがベスト。反対に、朝起きたら、カーテンを開けて明るい光を浴びましょう。目から光の刺激が入ると「メラトニン」が急激に減って体内時計がリセットされ、朝スッキリ起きられます。朝と夜のメリハリがつくことで活動的に1日を過ごせるようになります。

冷暖房器具を使って適切な温度と湿度を保つ

エアコン

快眠のためには、適切な温度と湿度の調節が欠かせません。

室内の温度が高すぎたり低すぎたりすると、眠りが浅くなり睡眠の質が下がります。特に熱帯夜が続く夏や、寒く乾燥している冬は対策が必要です。

夏の快眠対策

夏は、暑さを我慢せず冷房を使ってください。夜中に起きて冷房をつけると、体温が急激に下がって睡眠の質が低下します。

おすすめのエアコンの温度は、26度の設定。夏の湿度は70%程度と高いので、除湿機能を使って50〜60%に保ちましょう。

一晩中エアコンをつけておくことに抵抗がある人は、3時間後にエアコンの運転がオフになる設定にしてもOK。

また、こもった熱や湿気を逃すために、ひんやりした素材の寝具や寝ゴザなどを使うと、さらに涼しく眠れます。

冬の快眠対策

冬の室温は16〜20度が理想的。目安は、いつものパジャマに1枚羽織ると寒さを感じない程度です。

冬は手足が冷えて寝つきが悪くなる人も多いはず。そんな人は、眠る1時間前から電気毛布や湯たんぽで布団の中を温めておくのがおすすめです。

電気毛布は、つけっぱなしにすると自然な体温の低下を妨げてしまいます。人は体温が下がるときに眠気が強くなるので、寝るときにはスイッチを切るようにしましょう。湯たんぽは時間とともに冷えてくるので、布団に入れたまま眠ってもかまいません。

冬ののどの乾燥は睡眠の質の低下につながります。不快感だけではなく、風邪の原因に。加湿器を使ったり、濡れたバスタオルを部屋に吊るしたりして工夫をしてください。

※夏も冬も、その日の気温によって体感が違うため、暑すぎたり寒すぎたりしたら調整してください。

高すぎず低すぎない枕を使う

枕

枕は、高すぎても低すぎても睡眠の質を下げる原因に。

高すぎると首や肩、のどに負担がかかります。次の特徴に当てはまる人は、使っている枕が高すぎるかもしれません。

  • ひどいいびきをかく
  • 横向きの姿勢でしか眠れない
  • 睡眠中、知らない間に枕を外してしまう

一方で枕が低すぎると、心臓よりも頭の方が下がり、血液循環が悪くなります。次の特徴に当てはまる人は、使っている枕が低すぎるかもしれません。

  • 朝、顔がむくみやすい
  • 首の痛みや肩こりがある
  • 枕の下に手を入れる、枕を二つ折りにして寝ている

適切な枕の高さを調べるポイントは二つ。「仰向け」と「横向き」の寝姿勢でチェックします。

枕のベストな高さのチェック方法

枕の高さ
  • 仰向けで寝たとき…額と鼻を結んだ線が、床に対して5度の角度を保てる
  • 横向きで寝たとき…顔の中心線と胸〜腹の中心線が一直線になっている。さらにその線が床と平行になる

この二つのポイントを参考に枕を選べば、体に負担がない寝姿勢を保ちながら眠れます。

マットレスは必ず寝心地を試してから選ぶ

マットレス選びに重要なのは、次の二つです。

  1. 硬すぎず柔らかすぎない
  2. 寝返りがしやすい

人によって合う・合わないがあります。実際に店頭で寝転んでみて寝心地を試してください。

マットレスが硬すぎたり、柔らかすぎたりすると寝姿勢が安定せずリラックスできません。睡眠の質が悪くなるだけではなく、体にも負担がかかります。また、スムーズに寝返りが打てないと、体の一部に圧力が集中し、肩こりや腰痛の原因に。

店頭では、実際に「仰向け」と「横向き」で寝転んでみてチェックしましょう。

次のような姿勢が取れるマットレスが理想的です。

理想的なマットレスのチェック方法

  • 仰向けで寝たとき…首から背中、腰にかけて緩やかなS字を保ち、腰やお尻が沈んでいない
  • 横向きで寝たとき…顔の中心線と胸〜腹の中心線が一直線で真っ直ぐになっている。その線が床と平行になる

加えて通気性のいい素材を選ぶと、寝苦しい夏でも蒸れにくく、体にこもった熱を上手に逃してくれます。

眠りが浅い人がしがちなNG習慣

次からは眠りが浅い人がついやってしまうNG習慣をまとめました。多く当てはまる人ほど注意が必要です。夕方〜寝る前の習慣を変えるだけで、睡眠の質は向上します。

寝る30分前にはスマートフォンやテレビをシャットアウト

寝る前にスマホを触る女性

寝る直前までスマートフォンを手放せない人も多いはず。

眠りが浅くなる原因の中でも、「光の刺激」による影響が一番大きいと考えられます。人の体は、昼は明るい環境に、夜は暗い環境で過ごすことで体内時計が整います。

しかし、スマートフォンやテレビから出るブルーライトの強い光を浴びると、脳が昼だと勘違いして睡眠ホルモン「メラトニン」が減ってしまうことに。

電子機器は、少なくとも寝る30分前には使わないようにしてください。

ベッドを使うのは寝るときに限定

ベッドや布団の使い方にも眠るためのコツがあります。

ベッドでスマホを触ったり、本を読んだりするのはNG。なぜなら「ベッドは寝るためだけの場所」と脳が覚えないと、いざ寝ようと思っても眠気を感じにくくなるからです。

なかなか眠れないときは、一度寝床から出てください。「早く寝なきゃ」と焦ると、かえって脳が「寝床にいても眠れない」と認識して、寝つけなくなります。

一度寝床から出たら、好きなことをしながら自然に眠くなるのを待ちましょう。

寝る前のカフェイン、お酒は厳禁!

睡眠の質で悩んでいるなら、カフェインやお酒は避けてください。飲みたいときは、寝る3時間前までにしましょう。

寝る前に温かい飲み物を飲む習慣がある人は、コーヒーや紅茶は控えたほうがいいでしょう。これらに含まれるカフェインには、睡眠を促す物質「アデノシン」を抑える働きがあり、眠りを妨げます。

カフェインは夜ではなく昼食後に摂ると、覚醒作用が働き、午後からもシャキッと仕事や家事に取り組めます。

寝酒は逆効果

寝る前にお酒を飲むと、寝つきはよくなるものの眠りが浅くなり、夜中に目覚めやすくなります。

晩酌したとしても、寝床に入るときにアルコールが抜けている状態だと問題ありません。体重60キロの男性の場合、寝る3時間前までに日本酒なら1合、ビールなら500ml、ワインならグラス2杯までを目安に。女性や高齢者の場合、男性よりも肝臓のアルコール分解能力が低いのでこれの半分を目安にしてください。(※4)

※4…『不眠症の科学』(SBクリエイティブ・2011/3/16)坪田 聡 著より。

帰りの電車で居眠りしない

仕事帰りに疲れて電車でウトウトしてしまうのは、疲労を溜め込んでいる証拠です。

本来は眠る場所ではないところで寝ると、夜の睡眠の質を落としてしまいます。

電車内のように明るくて騒音がある環境では、リラックスして寝ることはできません。このタイミングで仮眠をすると、家に帰って夜寝ようとしても寝つけなくなり、その結果、睡眠時間が減ることに。夜の睡眠で疲労を回復できず、夕方の仮眠のせいで悪循環になります。

どうしても疲れてしまって電車で寝たいときは、10分以内に起きるようにしましょう。乗り過ごしを防止する「イヤホン目覚まし」などのアプリを使うと、他の人に迷惑をかけずに起きられますよ。

睡眠の質が改善されない場合は?

今回紹介した方法を試しても睡眠の質が改善されない場合は、睡眠専門医を受診しましょう。お近くに睡眠専門医や睡眠外来がない場合は、精神科に相談してください。

すでに夜中に何回も起きてしまう、寝ても疲れが取れないと感じている人も、一度相談してみましょう。

睡眠外来のクリニックでは、医師と相談しながら患者さんに合った生活習慣の指導をします。

まとめ:睡眠の質を上げるには昼と夜のメリハリをつける

睡眠の質を上げるには、日中は活動的に過ごし、夜はリラックスモードに切り替えることが大切です。昼は適度な運動をする、夜は明るさに注意したり、入浴や入眠儀式を実践したりして、スムーズに眠れる準備をしてください。

最初からすべてを取り入れるのは難しいですが、まずはNG行動を見直してみるだけでも効果的です。ちょっとした生活習慣の改善で、睡眠の質がグッと上がるでしょう。

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