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漢方

手間がかかるが効果が高い「煎じ薬」のこと|漢方専門医の「不調を解決する漢方の話」

「不調を漢方薬で改善したい」と思っても、うまく活用できていない人は多いもの。そこで、北里研究所病院で漢方科部長を務めた専門医・鈴木邦彦先生が、漢方薬と仲良くつきあう方法をお教えします。今回は第3回目。

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漢方薬と民間薬の違いを知っていますか?

漢方薬の材料となる「生薬」は、多くが植物由来です。そのため、民間療法で使われる民間薬と同じように思っている方もいます。

その違いをわかりやすく言うと、漢方薬は基本的に2種類以上の生薬を使い、民間薬は1種類の素材を使います。

たとえば、ドクダミやヨモギは、民間薬として昔から広く使われてきました。いずれも、その素材を単体で使いますよね。

漢方 よもぎ

一方、漢方薬の場合は、複数の生薬を組み合わせて、不調や病気に対処します。これが漢方薬の優れたところで、生薬の数や量を増やしたり減らしたりすることで、その人の症状や体質にピタリと合った薬が作れるのです。

漢方薬は形によって名前が違う

漢方薬といえば、顆粒状の「エキス剤」と呼ばれるものを飲んでいる人が多いと思います。実は、飲む漢方薬の形状には、3つ種類があります。

【漢方の内服薬の種類】

  • 「葛根湯」などの「○○湯」…生薬を煎じた液体
  • 「当帰芍薬散」などの「○○散」…生薬を粉末にしたもの
  • 「八味地黄丸」などの「○○丸」…つぶ状の丸薬。粉末の生薬に、はちみつなどとあわせて丸めたもの

クリニックなどでも処方されるエキス剤は、上のどの処方でも、すべて一度煎じた液体をフリーズドライにしたものです。エキス剤は扱いが楽で、服用も手軽なので広く普及しています。

漢方の粉末

一方、生薬をコトコト煮出してつくる「煎じ薬」は、手間ひまがかかるため、敬遠されがちです。しかし、それぞれの体に合わせた“さじ加減”ができる煎じ薬こそ、漢方薬で治療するいわば醍醐味ではないかと思います。

「煎じ薬」なら、あなたにピタリと合う処方に

コップを持っている女性

エキス剤は便利ですが、物足りないところもあります。

まずエキス剤は、使われる生薬の種類や比率が決まっています。つまり、みなさんの体質や症状に合わせた処方はできません。

そもそも、いま国内で認められている漢方薬の処方294※のすべてが、エキス剤になっているわけではありません。
※国内で一般用漢方製剤として承認基準が定められている処方

またエキス剤は、合わない生薬が入っているため使えない、ということもあります。

たとえば、胃の不調に良い「六君子湯(りっくんしとう)」を処方するとしましょう。使用されている8つの生薬のうち「甘草(かんぞう)」に対して合わない体質の方は「むくみ」を生じます。するとエキス剤の場合、この体質の方は、六君子湯を使えないことになってしまいます。しかし、煎じ薬なら甘草を取り除くことで、むくみを出すことなく、胃の不調を治すことができるのです。

このオーダーメイドの調合こそ、漢方薬の真の実力を発揮するところです。

「煎じ薬」と「エキス剤」をくらべてみると

煎じ薬とエキス剤

煎じ薬とエキス剤の長所と短所をまとめてみました。

〈煎じ薬〉

長所
・それぞれの症状や体質に合わせて調合するので、治療効果が高い
・エキス製剤にはない、さまざまな漢方薬を処方できる
・質の高い生薬を使用できる

短所
・薬を自分で煎じる手間がかかる
・液体なので、持ち歩きしにくい
・生薬はいわば生ものなので、品質管理の難しさがある
・一般的に自由診療になるため、価格が高い

〈エキス剤〉

長所
・袋詰めの顆粒剤を飲むだけなので手間がかからない
・持ち歩きができて、いつでも飲める
・品質が一定で、どの病院でも同じものが出る
・148種類※の医療用エキス製剤で保険が適用される
※2024年8月現在

短所
・製造過程で、芳香成分が飛んでしまうなど、有効成分が減っている
・複数の漢方薬を併用すると、同じ生薬が入っていることがあり、過剰になる
・どんな質の生薬原料を使っているかわからない

「煎じ薬」で傷がふさがった!

薬による違いがわかる実例をあげましょう。

Aさんは肝臓の手術をしたあと、傷がふさがらない状態が続いていました。西洋薬では対処する薬がないので、手術をした大学病院で、漢方薬の「十全大補湯(ジュウゼンタイホトウ)」のエキス剤が処方されました。

十全大補湯は、病後・手術後で全身が弱っているときによく使われる漢方薬で、局所の血流をよくすることで組織を修復する効果があります。しかし、2カ月服用しても、傷はなかなか治りません。

そこで当クリニックでは、同じ十全大補湯を、生薬の煎じ薬に切り替えました。すると、2カ月後に、傷がふさがったのです。同じ名前の薬で、使われている生薬の種類は同じですが、質のいい生薬を煮出して使う煎じ薬とエキス剤では、やはり効果が違うのです。

漢方薬を飲んだが効かなかったと言われることがありますが、それは症状や体質に最適な処方でなかった可能性が大きいと思います。
漢方医に相談して、本当に体にあった処方を見つけてみてください。

漢方専門医の鈴木邦彦先生への質問を募集中!

漢方専門医の鈴木邦彦先生への質問を受け付けます。ご応募いただいた質問の中から選ばせていただき、連載の中で鈴木先生からお答えします。

「漢方薬と西洋薬、どのように使い分けたらいいですか?」
「体質によって漢方を服用した方がいい人やしない方がいい人はいますか?」などなど、気になる質問をお送りください!
締切:2025年1月31日(金)昼12時まで

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