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“ 口腔の名医”2名と特別座談会 堀ちえみさん「口内炎と思ったら…」口腔がんを語る┃ホームドクター(5)

口の中にできる「口腔がん」。患者数は少ないものの、最近増えてきた病気です。今回の連載では、口腔がんサバイバーの堀ちえみさんと歯科医の柳下寿郎先生、柴原孝彦先生の3名に口腔がんについて語ってもらいました。

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2023年10月28日に開催された、堀ちえみさんが患者代表として参加した口腔がん検診啓発イベントの動画はコチラからご視聴いただけます。

「からだにいいことホームドクター」とは?
「この健康法は自分に合っているのかな」「どうしてこんな不調が起きるんだろう」など、自分ではわからないけれど病院に行くほどではない“セルフケア以上、診療未満”のお悩みを、各科の名医と一緒に解決していく、健康応援プロジェクトです。

「誰も知らない」口腔がん そして見逃され続けた

堀さん座談会
柴原孝彦先生(左)、堀ちえみさん(中央)、柳下寿郎先生(右)

堀さん 今は口腔がんの啓蒙活動をしていますが、舌がん(口腔がんの一種)になるまで私も私の周りの人も口腔がんの存在を知りませんでした。

柳下先生 芸能界にも口腔がん患者はいるのですが、石原裕次郎さんとかチェッカーズの徳永善也さんとか。なかなか人の口の端に上らない。

柴原先生 統計では、口腔がんに罹患するのは10万人に2〜3人。発生率が低い「希少がん」で、ゆえに認知が広まらないのでしょうね。

堀さん 舌に異変が出たとき、口内炎だと思ったんです。なかなか治らなかったのですが、かかりつけの歯科医院でも「口内炎です」と。レーザーで焼いてもらいました。当時リウマチの治療薬を服用しており、その副作用の1つが口内炎で。だから余計にがんだとは疑わなかったんです。

柴原先生 リウマチの薬は免疫抑制剤で、確かに口内炎が出やすくなります。同時に、治りにくくなる。

柳下先生 その先生は堀さんの舌を触って確認しましたか?  ステージ4なら大きなしこりがあったはず。

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堀ちえみさん/歌手、女優、タレント。2019年に口腔がんと診断され、芸能活動を一時休業。現在は復帰し、音楽から食育まで様々な分野で活躍。

堀さん 触っていました。しこりもあると自分で気がついていたので指摘しましたが、先生は「大丈夫」だと。

柳下先生 であればなおさらがんを疑うべきところですね。最近は口腔がんについて歯学部の学生に教育しますし、国家試験にも出ます。しかし今歯科医である人がどの程度、口腔がんについて知っているか疑問です。

堀さん 当時は歯科のほか内科や婦人科なども受診していました。なのにがんを見逃され、エアポケットにスポッと落っこちた気分です。

柳下先生 医師がそろいすぎて全員が傍観してしまったのかも。しかし、口の中を見るのは歯科医。歯医者こそが口腔がんを見つけるべきでした。

いい歯科医を探すにはプロフィールで判断を

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柳下寿郎先生/日本歯科大学附属病院教授、一般社団法人口腔がん撲滅委員会代表理事。歯科医師。専門は口腔病理など。

柳下先生 口腔がんの患者数は少ないので、生涯でほとんど患者を診たことがないという歯科医も多い。数が少ないから、口腔がんやがんになる直前の粘膜の病変に歯科医の意識が向きにくいという面もあります。

柴原先生 それにそもそも、普通の歯科検診だと「粘膜を見る」という項目がありませんよね。歯を見る、とか歯周病かどうか確認する、とかはあるのに。また、粘膜を診察しても保険の点数にならない。それも意識が向きにくい理由の1つでしょう。

堀さん 私のかかりつけ医は口腔外科の看板を掲げていて、大学病院と提携していました。それは歯科医を探す目安にはならないのでしょうか?

柴原先生 実は、歯科医であれば誰でも口腔外科と名乗れるんです。だから「口腔外科」でも口腔がんに詳しいとは限らない。いい歯科医を探すにはプロフィールから判断するしかないのです。どんな学会に入っているか、認定医・専門医かどうかとか。自分で探すのが難しい場合は、地域の歯科医師会に紹介してもらう手もあります。

がんで苦しまないために、ぜひセルフチェックを

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柴原孝彦先生/東京歯科大学名誉教授、一般社団法人口腔がん撲滅委員会特別顧問。歯科医師。専門は口腔がん、口腔粘膜疾患など。

堀さん 私は結局、自分で探した大学病院に行きました。そこの先生は舌を見るなり一目で「口腔がんのステージ4です」と。告知よりもすぐに見抜かれたことが衝撃でした。そのとき、もし口腔がんの存在を知っていたら早期発見できたのに、と思ったんです。そうしたら会話や食事に苦労することもなかった。

柳下先生 前がん状態や初期段階であれば簡単な処置で済み、舌を大きく切る必要もなかったかもしれません。口腔がんはほかのがんと違い自分の目で見ることができます。口内の粘膜を見て赤と白の病変があり、2週間経っても消えなければ、おかしいと思ってください。かかりつけ医のところに行くか、不安であれば大学病院へ行くことをおすすめします。

柴原先生 みなさんには、口にもがんができることを知り、週1、月1でもいいから口腔をまんべんなく見てチェックしてほしいと思っています。昔は口腔がんといえば50、60代の男性の病気でしたが、最近は若い女性の患者も増えてきています。

堀さん 最近ようやく口腔内検診が定着し始めましたが、「歯医者は怖いから行きたくない」「口の中の異変は放っておいたら治る」と言う方も多いですよね。でも私のようにならないために、正しい知識を持ち、おかしいと思ったら検査を受けてください。こう伝え続けることは、がんに打ち勝った私の使命だと思っています。

口腔がんとは

口のあらゆる場所にできる、がんの総称

「口腔がん」とは口の中にできるがんの総称で、歯以外のどの部位にも発生する可能性があります。発生部位として多いのが舌で、舌がんは口腔がんの中で6~7割を占めます。がんが発生するほかの部位としては、歯ぐきや舌の下、ほおの粘膜などがあげられます。乳がんや大腸がんと比べると患者数はかなり少ないものの、最近は増加しつつあります。

口腔がんを防げ!セルフチェックリスト

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口腔がんがほかのがんと異なるのは、「目で見て手で触れられる」こと。また、早く見つけさえすれば、比較的治りやすいがんだと言われてます。一方で、口腔がんの認知度が低いために発見が遅れがち。日本は先進国で唯一、死亡者数が増え続けています。上のリストを参考に、歯磨きのときなどに口の中をチェックしてみて。

撮影/大槻夏路 ヘアメイク/納富順子 協力/メディコレ
(からだにいいこと2021年12月号より)

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