歯磨きをしても口臭がきつい原因は?40代からの正しいお口ケア
マスクをつけているときや、人と話すときなど、ふとした瞬間に気になる口臭。毎日歯磨きをしているのになぜ? 40代からの口臭対策について、医師が解説します。
目次
一番口臭がキツくなりやすいのは、40代以上の女性!?
仕事に家事、子育てと男性以上に日々の用事に追われ、自分の心や体に気を使う余裕がない40代女性。そんな世代にとって、対人関係にも大きな影響を及ぼす「口臭」は、最も注意が必要です。実は、40歳以上の女性の口臭が一番におうのです!
調査によると、女性(17.9%)の方が、男性(8.3%)より2倍以上口臭がすることが明らかになりました(※1)。中でも、若年女性では口臭がする人が11.5%だったのに対し、40歳以上では24.1%と“4人に1人”の割合に跳ね上がるのです。
今回は40代からの口臭対策として、これだけは知っておきたいお口ケアについてお話しします。
40代からの正しいお口ケアのポイントは?
40代からは口臭が強くなるために、これまでとは違ったお口ケアが必要となります。
そもそも「口臭」には、「生理的口臭」と「病的口臭」の2つがあります。
まず、全体の32%(※2)を占める「生理的口臭」。その原因は、舌の表面にいる口臭菌が出す「硫黄化合物」の臭いで、この菌を除去しないと臭いは取れません。
続いて「病的口臭」の原因は、歯周病(66%)、もしくは、内臓疾患などの全身の状態(2%)によるもの(※2)。
歯周病の場合は、歯周病菌が出す「メチルメルカプタン(悪臭を放つ成分)」が原因となるため、歯周病対策が必要となります。全身の状態が原因の場合は、「硫黄ジメチル(悪臭を放つ成分)」によるもので内臓疾患の治療が必要です。
このように、40代になると歯周病が発症しやすくなり、それが原因で口臭が強くなるのです。つまり、臭わないお口になるには、歯周病対策をしなくてはなりません。
臭いで分かる「10秒口臭チェック」のやり方
そもそも自分は口臭がキツイのか? 口臭があるならどの程度なのか? それが一番気になりますよね。
口臭セルフチェックの方法は簡単。まず、スーパーのサッカー台に設置されているようなナイロン袋を用意してください。
そこに自分の息をゆっくり吐いて溜め、袋がめいっぱい膨らんだら閉じます。5秒くらい待ってから、袋の中を嗅ぐと自分の口臭がわかります。
ゆで卵の臭いがすると口臭菌が原因。つまり原因は「生理的口臭」です。
台所の三角コーナーの臭いがすれば、歯周病が原因。また、生ゴミの臭いだと、内臓疾患などの体の状態が影響しています。
最初は判別することが難しいかもしれませんが、この方法でチェックして臭わない場合は、気にする必要はありません。「おや?」と思うレベルなら口臭菌が原因ですが、少しでも「臭い!」と思ったら歯周病が原因です。
歯周病が原因の口臭はキツイですから、40代からはぜひとも注意したいところです。またこの年齢では、多くの方が全身の状態が良好ですので、口臭に影響を与えることは少ないでしょう。
歯磨きで口臭は改善しない!?
お口がにおうから、歯磨きを一生懸命やらなくちゃと、がんばっている人も多いかもしれません。しかし、口臭は歯磨きだけでは改善しないのです。
実際、歯磨きを1日3回以上している人の方が、2回以下の人より口臭がする割合が高いのです(※1)。
それは、口臭の原因が歯にはないから。口臭の原因は、都市伝説のように「歯」と考えられ、そのため口臭対策の決め手は「歯磨き」とされていました。
確かに歯磨き粉や洗口液にはスッキリする成分や香料が含まれているので、歯磨きの直後は口臭がなくなった気になります。
しかし口臭の主な原因は、「舌の汚れ」と「歯周病」。これらの原因を解決する対策が、本当の口臭予防になるのです。次から具体的にどんなことをしたらいいのかをご紹介します。
口臭対策に!正しいお口ケアのやり方
口臭セルフチェックでゆで卵の臭いだった人は、舌表面の口臭菌の対策をしましょう。
舌を鏡で見ると真ん中から奥にかけて白くなっています。これは舌表面に溜まった垢(舌苔)で、この中に口臭菌が潜んでいるのです。
市販の舌ブラシを使って、舌の表面を軽く奥から手前に擦り、舌苔と一緒に口臭菌を除去します。毎日の歯磨き後に繰り返しおこなうことで、舌の色も改善し口臭も気にならなくなります。
三角コーナーの臭いがする人は、歯周病対策が必要です。歯磨きで出血したことのある人は、全員が歯周病になっていると言っても過言でありません。
「毎日歯磨きをしているし、自分は大丈夫」と思っていませんか? 40代になったら、安易に考えるのは禁物です。歯周病は、ギネス世界記録で「世界で最も感染者の多い病気」に認定されるほど多く、「世界で感染していない人はほとんどいない」のです。
毛先と硬さがポイント!歯周病対策になる歯ブラシの選び方
歯周病菌は、歯茎と歯の境に潜んでいるため、隙間を丁寧にブラッシングする必要があります。歯ブラシには2種類あり、毛先が平らにカットされているのが「ラウンドタイプ」で虫歯用、毛先が尖っているのが「テーパータイプ」の歯周病用です。
毛先の柔らかいものを選び、歯に対して45°の角度をつけて細く動かし、隙間にいる歯周病菌を掻き出してください。毛先が少したわむ程度の力を目安にします。
歯周病用の「テーパードタイプ」ではなく、毛先の硬い「ラウンドタイプ」の歯ブラシで力を入れて歯みがきをすると、歯茎を傷つけ、歯周病を悪化させることになります。
気になる口臭を本気で予防する「完全対策マニュアル」
(1) 歯周病予防に効果的な成分をチェック
歯周病が原因の口臭は強いので、日ごろからしっかりしたお口ケアが必要です。歯磨きのときには、歯周病菌に有効な「イソプロピルメチルフェノール(IPMP)」配合の歯磨き粉か、あるいは洗口液を選びましょう。パッケージの裏面などに記載してある成分表示で確認できます。
(2) 40代からの歯間ブラシorフロスは必須!
歯ブラシだけではなく、歯周病が最初に発生する歯と歯の間を、歯間ブラシとフロスを使って清掃します。歯間清掃は40代からはマストケアです。寝る前の歯磨きは、時間をかけて徹底的に歯周病対策を。
(3) 歯科医によるプロの歯周病ケアも
残念ながらセルフケアだけでは完全な歯周病対策にはなりません。かかりつけ歯科医を定期的に受診して、歯周病菌を根こそぎ除去してもらいましょう。
歯周病があると、内臓肥満(メタボ)や全身の健康にも悪い影響を与えます。トラブルがあっても症状を感じづらいお口の中。つい、肌や体のケアばかりに目が行きがちですが、40代以降は歯のケアも必須。今日からしっかり対策をしましょう。
出典
(※1)https://gogohaisha.com/breathhazard/assets/pdf/surveyreport.pdf
(※2)『あなたの知識は最新ですか? 歯科衛生士のための21世紀のペリオドントロジーダイジェスト』第1版/2016年 天野敦雄 著(クインテッセンス出版)より。
イラスト/小松容子
[ 監修者 ]