“良質な油”を選んでおいしく摂る「オイルファースト」
いま話題の「オイルファースト」、聞いたことありますか? 今回は、質の良い油を上手に取り入れる、「からだにいいこと」流の「オイルファースト」をご紹介します。油を見直すことで体の中から健康と美しさを手に入れられますよ!
目次
「オイルファースト」は本当に体に良い?専門家が解説!

「オイルファースト」は、北里大学・北里研究所病院の糖尿病センター長、山田悟先生が提唱する食事法。食事の最初にスプーン1杯のオイルを摂ることで血糖値の上昇をゆるやかにし、ダイエットにもつながると、SNSでも注目を集めています。
でも、今までの食生活に、ただ油を足せばいいわけではありません。そこで今回は、「オイルファースト」のメリット・デメリットを解説。さらに、「良い油」と「悪い油」の見分け方や選び方、調理のポイントまで、「からだにいいこと」ならではの視点を盛り込んだ、オイルファーストの実践法をご紹介します。
教えてくれたのは、脂質栄養学と分子栄養学のエキスパートであるオイリスト・地曳直子さんです。
オイルファーストのメリット:血糖コントロール&ダイエットにうれしい効果も
オイルファーストにはどんなメリットがあるのでしょうか。
(1)血糖スパイクを抑える
糖質を控えながら脂質を積極的に摂ることで食後の血糖値が上がりにくくする、ロカボ(低糖質・高脂質)食事法なので、血糖スパイクの抑制効果が期待できます。
(2)食べ過ぎを防止
脂質を摂ることで食欲抑制ホルモンの分泌を促し、脳の満腹中枢にも働きかけて自然と食べ過ぎを防止。ダイエットにうれしいポイントです。
(3)代謝をサポート
「油=太る」と思われがちですが、脂質をしっかり摂取することで代謝をサポートし、脂肪を燃焼しやすい体質作りにもつながります。
オイルファーストのデメリット:オイルの質と量を間違えると体の負担になる
一方で、実際にオイルファーストを取り入れる際には、以下の点に注意が必要です。
(1)中性脂肪の増加
加熱して酸化した油や、スナック菓子・加工食品に多いパーム油などは、体内で炎症を起こしたり、中性脂肪を増やす可能性があります。摂りたいオイルの種類や状態も見逃せないポイント。
(2)太りやすくなる
朝食に唐揚げにマヨをかけて食べても問題ないという説もあるようですが、オイルは1gあたり約9kcalと高エネルギー。体にいいと言われるオイルも摂りすぎれば太る原因に。どれくらいの量の油を摂るかを意識することも大切です。
(3)胃腸に負担がかかることも
オイルを摂るタイミングにも注意が必要です。空腹時にオイルを単体で飲むように摂取することは消化に負担がかかる場合があります。食事の中で、ほかの食材と一緒に摂ることで、消化も吸収もスムーズになります。
身近な油を見直すことから「オイルファースト」をはじめよう!
おすすめしたいのは、従来の「オイルファースト」のデメリットをカバーしつつ、質のいい油を上手に取り入れて健康の味方にする方法。油の見直し方や選ぶときのポイントを知っておきましょう。
まずは、つい摂りがちな「オメガ6系脂肪酸」を見直す

オイルの主成分である脂肪酸には、いくつか種類がありますが、摂り過ぎに気をつけてほしいのが「オメガ6系脂肪酸」が多く含まれるオイルです。サラダ油や大豆油、マヨネーズなど、多くの食品に含まれるため現代人の食生活では過剰になりがちな脂肪酸。摂りすぎると体の炎症を招いたり、血液が固まりやすくなったりすることがあります。
特にサラダ油に多く含まれるオメガ6のリノール酸は、高温で加熱すると酸化し、「ヒドロキシノネナール」という毒性物質を発生させますので、酸化した油を摂りすぎないように気をつけましょう。
また、知らず知らず摂りすぎたオメガ6のバランスを整えてくれるのが、「オメガ3系脂肪酸」です。青魚やえごま油、亜麻仁(アマニ)油など、限られた食材にしか含まれないため、不足しやすいので積極的に摂りたい脂肪酸でもあります。炎症を抑え、血管をしなやかにし、中性脂肪を下げるなど、体にうれしい働きがあり、体に良い油と言われています。
日常の食生活を見直し、オメガ6の摂りすぎに気をつけることが、上手な「オイルファースト」のはじめの一歩です。
「パーム油」など、気づきにくい“見えない油”にも注意

スナック菓子やファストフード、加工食品などによく使われるパーム油。「植物由来だから安心」と思いがちですが、実は、肉の油やラードと同じ「飽和脂肪酸(パルミチン酸)」が多く含まれるため、注意が必要です。エネルギー源にはなりますが、摂りすぎると中性脂肪や悪玉(LDL)コレステロールが上がりやすく、体の中で炎症を起こすこともあります。
また、原材料表示に「植物油」や「ショートニング」と書かれた食品には、リノール酸を中心としたオメガ6系脂肪酸やパーム油が多く含まれるため、摂りすぎには気をつけましょう。
サラダにかけるオイルや炒め油のような“見える油”だけでなく、肉や加工食品に含まれる“見えない油”*にも気を配り、全体の摂取量を管理することが大切です。
オイルの製造方法をチェック!「圧搾法」を選ぼう

より栄養価の高い質の良いオイルを選ぶには、どのような方法で作られているかもチェックしましよう。
安価な大容量オイルの多くは「溶剤抽出法」で作られ、原料の油分を効率的に取り出すときに、「ノルマルヘキサン」というガソリンのような溶剤を使うため、植物特有の風味が消え、成分が変わったり栄養が失われたりすることもあります。
ゆっくり圧力をかけて搾る「圧搾法」で、製造工程がシンプルで精製度の低いオイルなら、植物本来の栄養素がしっかり残っています。ラベルに、圧搾法か「低温圧搾法(コールドプレス)」と書いてあるものが目印です。
製造工程に加え、酸化しやすいかどうかも油の質を左右します。遮光瓶や光を通さない箱に入った油は、酸化を防ぎ、より鮮度の良い状態で使うことができます。
地曳さんおすすめ!からだにいいオイル7選
美肌やダイエット効果など、女性にもうれしいオイルを地曳さんが厳選。栄養素を効率よくおいしく摂る方法もご紹介します。
オイルを取り入れる際は、加熱して酸化させる調理はなるべく避け、鮮度の良い状態を保つことが重要です。調味料のように、毎日の食卓にオイルを常備しておくのもおすすめです。
えごま油・亜麻仁油

えごま油はシソ科植物・えごまの種から、亜麻仁油はリネンの原料になる亜麻の種から作られるオイル。どちらもオメガ3の「α-リノレン酸」を豊富に含み、血液をサラサラにする働きがあります。オメガ6系脂肪酸の摂りすぎで起こる炎症をやわらげる、オメガ3系オイルなので、積極的に摂りましょう。加熱や光によって酸化しやすい性質があるため、ドレッシングに入れて生でかけたり、和えたりするのがベストです。
●保存方法/冷蔵
オリーブオイル

いくつが種類がありますが、ポリフェノールを豊富に含むのが「エクストラバージンオリーブオイル」。中でも早摘みのオイルは、非常に高い抗酸化力・抗炎症作用のある「オレオカンタール」が含まれています。トマトジュース(温めてもOK)に、ティースプーン1杯のオリーブオイルを加えてみましょう。トマトに含まれる「リコピン」は油に溶けやすい性質を持っているため、オイルと一緒に摂ることで吸収率がアップします。
●保存方法/冷暗所
MCTオイル

ココナッツオイルやパーム核油から作られる植物オイルで無味無臭です。加熱はNGですが、温かい料理にかけて使うのは問題ありません。コーヒーやミルクティー、ココアなどの飲み物にちょい足しして、手軽に摂ることができます。MCTオイルには、中鎖脂肪酸が豊富に含まれ、すぐにエネルギー源として働き、糖質が足りない状態でも脳や体の働きをサポート。疲れたときのティーブレイクや朝の元気チャージにぴったりです。
●保存方法/常温
ココナッツオイル

別名「ヤシ油」とも呼ばれます。エネルギー源になりやすく、体脂肪として蓄積されにくいのが特徴。25℃以下で固形になりますが、酸化しにくく熱に強いため、調理油をサラダ油からココナッツオイル(無香タイプ)に置き換えるのもおすすめです。また、ココナッツの独特の甘い香りが残るものもあるので、バターやマーガリンの代わりにトーストに塗れば、香りも味も楽しめます。トーストにはオリーブオイルやひまわりオイルもよく合います。
●保存方法/常温
米油

米ぬかから採れるオイルで、特に圧搾製法の米油には、ビタミンEの40~60倍の抗酸化力を持つ「トコトリエノール」や米ぬか特有の機能性成分「γ-オリザノール」が豊富。中性脂肪を下げたり、自律神経を整えたりする働きも期待できます。 加熱調理も可能ですが、せっかくの抗酸化成分が減少してしまうため、和え物やサラダにかけるなど生で摂りましょう。さらっと軽い米油はおかゆと相性抜群。また、手作り鮭フレークに少量の米油を混ぜると、鮭に含まれるDHAやEPAの酸化が防げます。
●保存方法/冷暗所
ひまわりオイル

ひまわりの種から採れるオイル。「高リノール酸」ではなく、オレイン酸が主成分の「高オレイン酸」タイプを選びましょう。オレイン酸にはLDL(悪玉)コレステロール値を下げる働きや腸のぜん動運動を促す働きがあるので便秘がちな女性にも◎。また、アンチエイジングに役立つビタミンEも豊富。活性酸素をおさえる抗酸化作用に加え、血行をサポートする働きもあるので冷えが気になる人にもおすすめです。酸化しにくいため加熱調理にも使えます。
●保存方法/冷暗所
質の良い油を適量取り入れて、体の内側から健康に美しく!

「オイルファースト」で最も重要なポイントは、油の量と質のバランス。炒め物や揚げ物を控えて、減らした分のオメガ6系脂肪酸や酸化した油は、今回紹介しているオメガ3系オイルやMCTオイルなどで上手に補いましょう。
オメガ3系オイルやMCTオイルは加熱に弱く、生で摂るのがよいでしょう。手作りドレッシングを作るときは、酸化を防ぐために食べる直前にオイルを加えるのがおすすめです。また、ヨーグルトや納豆、味噌汁などの発酵食品にプラスすると、おいしく腸活のサポートにもつながります。
良質な油を補う目安は1日あたり小さじ1杯。MCTオイルの場合は、大さじ1杯まで。空腹時にそのまま飲むのは避け、食事中に取り入れることで、他の食材の栄養吸収も効率よく高められます。
適量を守りながら良質な油を取りることで、体の内側から肌のコンディションも若々しく整っていきますよ!
「亜麻仁油が体にいいって聞くけど、 ダイエットにも効くの?」そんな疑問にお応えします! “…
買ってはいけないオリーブオイルの特徴を押さえれば、質の高いオリーブオイルを見つける手助けに…
みなさまは毎日どのような食用油をお使いですか。健康に良いとされるオリーブオイルや亜麻仁油、…
[ 監修者 ]




















