
大福を食べれば映画館でも安心?【医師監修】尿意を遠ざけるコツ
映画館で上映中にトイレに行きたくなっちゃう…そんな経験、ありませんか?今話題の“大福を食べると尿意を抑えられる説”は果たして本当なのか、そして、正しい尿意対策について医師に聞きました。
目次
餅や大福を食べるとトイレに行かずに済む?

長時間の映画やコンサートの前に、餅や大福などの高糖質食品を食べると尿意が収まるという情報が、SNSなどで拡散されています。
「餅を食べるとトイレに行く回数が減る」は、医学的な根拠が乏しく、餅を食べることで尿意が減ると信じ込むことによって実際に尿意が減ったように感じる、プラセボ効果である可能性が高いと考えられます。
「餅や大福に含まれる糖質を摂取すると水分と結合し、体内に水分が一時的に溜まることで尿の量が抑えられる可能性はあるかもしれませんが、根本的な解決にはなりません。糖質の摂りすぎは、糖尿病などの病気のリスクを高めるので注意が必要です。実際、糖尿病の人は頻尿になりやすい傾向があります。さらに、糖尿病になると感染症にかかりやすくなるので、膀胱炎のリスクも高まるため、高糖質食品を頻尿対策として日頃から摂取することは避けたほうがよいでしょう」」と、医師の村山 慎一郎先生。
そこで、よくある尿の悩みの原因と根本的な対策について詳しくご紹介します。
またトイレに行きたい…尿トラブルの原因
頻尿や尿漏れ、残尿感、排尿痛などの尿のトラブルは加齢や生活習慣、疾患などさまざまな原因によって引き起こされます。

尿意が起こる仕組み
膀胱に尿が溜まると膀胱が伸び、その信号(尿意)が脳に送られると、脳は膀胱を収縮させるように指令を出し、膀胱の筋肉が収縮することで尿が体外に排出されます。
この一連の流れは、自律神経系によってコントロールされ、意識することなく行われています。
加齢により膀胱が硬くなると頻尿になる
一般的に膀胱に約100ccの尿が溜まると尿意を感じ始め、200~300ccで本格的な尿意を催します。
しかし、加齢に伴い膀胱の筋肉が衰え、伸び縮みが悪くなると、膀胱が硬くなり、少量でも尿意を感じやすくなります。尿意を感じてから排尿を我慢する能力も低下するため、おしっこが近い、夜間に何度もトイレに行くといったことが増えます。
女性に多い、膀胱が過敏になる「過活動膀胱」

過活動膀胱とは、膀胱が過敏になり、尿が十分に溜まっていない状態でも膀胱が収縮してしまう状態を指し、頻尿や尿意切迫感、切迫性尿失禁(尿漏れ)などの症状が現れます。
飲む水の量にかかわらず頻繁に尿意を感じることになるので、不快感や不安を引き起こし、日常生活に支障をきたすこともあります。
主に加齢で膀胱が硬くなることで過活動膀胱の症状が出ますが、女性の場合は、妊娠・出産をきっかけに過活動膀胱になるケースも多く、これは出産による骨盤底筋のゆるみが一因です。
ただ、尿トラブルの原因として、過活動膀胱のほかに、膀胱炎や尿路結石、がんが隠れている可能性もあります。これらの病気を除外するために、尿検査などの診察が行われます。
「OABSS」で過活動膀胱の症状をチェック
「過活動膀胱症状スコア(OABSS:Overactive bladder symptom score)」という質問票を用いて、過活動膀胱の可能性をチェックできます。「朝起きてから寝るまでの排尿回数」「夜間の排尿回数」「尿意切迫感」「我慢できるか」の4項目から構成され、合計点数によって重症度を判定します。

<過活動膀胱の診断基準>
質問3が2点以上、かつ合計点数が3点以上
<過活動膀胱の重症度判定>
軽症:合計点数が5点以下
中等症 :合計点数が6~11点
重症:合計点数が12点以上
「OABSSの点数によって重症度が判定されますが、あくまで指標です。軽症の場合は必ずしも薬物治療が必要ではなく、我慢できるならそれで問題はありません」(村山先生)
ストレスや不安で頻尿になることも
OABSSには含まれないが、水の音を聞くと尿意を感じたり、電車やバスなどのトイレに行けない状況の前に念のためにトイレに行ったりする人も多く、それが結果的に排尿回数を増やすことにつながるケースがあります。
これは「心因性頻尿」といい、リラックスしている時にはトイレが気にならないのが特徴。ストレスや不安が膀胱の収縮を促し、尿意を強く感じやすくなるため、トイレの回数が増えると考えられています。
薬や行動療法によってトイレに対する不安を取り除けるので、症状が悪化する前に、泌尿器科や婦人科などを受診し、診察を受けることをおすすめします。
日頃の「骨盤底筋体操」で尿意に負けない
餅や大福などに頼らない、根本的な頻尿や尿漏れ対策としておすすめなのが、膀胱の柔軟性を高める、骨盤底筋体操です。

骨盤底筋は、膀胱や子宮、直腸などを支える筋肉。尿道や肛門の開閉にも関わっているので、これらの筋肉を鍛えて柔軟性を高めることで、尿意を我慢する能力が上がり、トイレの回数を減らす効果が期待できます。
座りながらできる骨盤底筋体操のやり方

How To
椅子に座り、肩の力を抜く。お尻の穴や尿道をギュッと引き上げるように意識しながら10秒間締めたら、ゆっくり緩める。これを10セット行う。仕事中もひっそりトレーニング可能!
こまめな水分補給で膀胱を元気に!

餅や大福による一時的なトイレ対策よりも、日頃のこまめな水分補給のほうが、尿トラブルの予防に役立ちます。実際に、頻尿に悩む人ほど水分摂取量が少ない傾向にあります。
水分を多く摂取すると一時的にトイレに行く回数が増えるかもしれませんが、長期的には膀胱炎や尿路結石の予防などにつながり、結果的に頻尿のリスクを減らせます。1日1~1.5リットルの水分を意識し、一度に飲水量を増やすのではなく、こまめに飲むように心がけましょう。
職業によってはトイレに行きにくい人もいますが、我慢をしすぎないことも膀胱の健康維持のためには大切ですよ。

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