
貧乏ゆすりをするのはなぜ?止めなくて良い理由と意外な健康効果
貧乏ゆすりというと、良い印象を持たない人も多いでしょう。でも実は、貧乏ゆすりをしてしまうのには理由があります。しかも、体にとって嬉しい効果も期待できるのです。意外な健康効果も含めて解説します。
目次
貧乏ゆすりをしてしまう原因
無意識のうちにしてしまう、貧乏ゆすり。実は、イライラや退屈といった心理的な要因のほか、身体的な理由で貧乏ゆすりをしてしまうこともあります。
この動きの背景にある原因を見ていきましょう。
下半身の血行不良

長時間座ったままでいると、どうしても足の血行が滞りがちになります。特にデスクワークなどで座っている時間が長い人は、足のむくみや冷えを感じることがあるのでは。
こうした状況に置かれたとき、体は滞った血行を良くしようと、無意識に足を小刻みに動かすことがあります。これが貧乏ゆすりとして現れると言われています。
緊張やストレス

私たちは、緊張したりストレスを感じたりすると、その不快感やフラストレーションを和らげようとして、無意識のうちに体を動かすことがあります。これは「固着反応」と呼ばれており、一定の動きを繰り返すことで心理的に落ち着こうとする行動だと考えられています。
貧乏ゆすりは、この固着反応の1つとして見られる場合があります。イライラや不安を落ち着かせたいときに、自然と体が揺れることで、気持ちを紛らわせようとする体の反応と言えるでしょう。
貧乏ゆすりのほか、爪を噛む、髪をさわる、指で机をたたくといった行動が固着反応として現れる人もいます。

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レストレスレッグス症候群

貧乏ゆすりの原因として、「レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)」の可能性も考えられます。これは、じっと座っていたり横になったりしているときに、下肢にむずむずするような不快な症状が現れ、脚を動かすとその不快感が和らぐという病気です。
原因がはっきりしない場合もありますが、鉄分不足や腎臓の病気、妊娠などが関係することがあると言われています。頻繁に貧乏ゆすりが出て、下肢に不快感がある場合は、脳神経内科や心療内科に相談してみるのも良いでしょう。
貧乏ゆすりの健康効果
貧乏ゆすりは、マナーとして気になる場合もあるかもしれませんが、実は私たちの体にとって嬉しい健康効果があると分かってきています。脚を小刻みに揺らす動きは、医学的には「ジグリング」とも呼ばれ、その効果が注目されています。
血流が良くなり、むくみ・冷えが改善する

貧乏ゆすりの最もよく知られている効果の1つが、血流の改善です。
貧乏ゆすりで動かすふくらはぎは、「第二の心臓」とも呼ばれ、足の血液を心臓に戻すポンプのような働きを持つ部位。貧乏ゆすりをすると、このポンプ作用が活発になります。すると、重力の影響で下半身に滞っていた血液を押し上げることができ、全身の血行が良くなると期待できます。
血行が改善すれば、足のむくみや冷えの緩和にもつながると考えられます。実際に、貧乏ゆすり5分間を続けることで下肢の温度が上がったという実験結果も報告されています。
股関節の可動域が広がる
貧乏ゆすりをすると、股関節が小刻みに動きます。この動きが、かたまりがちな股関節まわりの筋肉をほぐして柔軟性を保ち、関節の動きをスムーズにすることに役立つと考えられます。
股関節の軟骨がすり減って痛みが生じる「変形性股関節症」のリハビリテーションとして、貧乏ゆすりに似た運動「ジグリング」を取り入れるケースもあります。関節内を満たす「関節液」の巡りを促すことで、関節の動きをなめらかにしていると考えられます。
股関節の可動域が広がるため、歩きやすさの改善にもつながるかもしれません。
エコノミークラス症候群の予防

飛行機や新幹線などで長時間、脚を動かさずに座ったままの状態が続くと、脚の静脈に血栓(血の塊)ができやすくなることがあります。これが血管中を流れ、肺の血管などに詰まると「エコノミークラス症候群」を引き起こすおそれがあります。
貧乏ゆすりによる血行改善は、血栓ができるリスクを減らす方法の1つ。立ち上がったり少し歩いたり……といったことが難しいときに、貧乏ゆすりが予防になるのは心強いですね。
フレイル予防・認知機能向上につながる可能性も
運動不足や高齢者の場合、貧乏ゆすりで下半身の筋肉を動かすと、筋力の維持や向上につながる可能性があります。
ふくらはぎや太ももといった大きな筋肉を動かし、筋力を維持することで、将来的なフレイル(加齢による心身の衰え)の予防にも役立つと考えられます。
さらに、血行が良くなると脳への血流も促進。結果として認知機能の維持にも良い影響を与える可能性が研究で示唆されています。貧乏ゆすりが、活動的な毎日を送るためのサポートになるかもしれません。
精神的な効果

貧乏ゆすりのリズミカルな動きは、心の安定にもつながると言われています。
一定のリズムでの動きを繰り返すと、「幸せホルモン」とも呼ばれる神経伝達物質・セロトニンの分泌を促進。精神を安定させたり、リラックス効果をもたらしたりといった効果が期待できます。
イライラしたり不安を感じたりするときに貧乏ゆすりをしてしまうのは、体が無意識に心のバランスを取ろうとしているのかもしれません。貧乏ゆすりが心の健康をサポートしてくれることもあるのです。

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貧乏ゆすりの治し方や対処法
貧乏ゆすりには健康に良い面がある一方で、「周りの目が気になる」「止めたい」と感じている人もいることでしょう。
ここでは、貧乏ゆすりを止めたい場合の対処法や、周りの人が貧乏ゆすりをしている場合の対応について解説します。ただし、貧乏ゆすりが必ずしも悪いものではないと理解しておくことも大切です。
自分で意識的に止めるには

貧乏ゆすりは無意識にしてしまうことが多いもの。「やめよう」と意気込むよりも、やり始めたときに「今、貧乏ゆすりをしている!」と気づくことが、改善につながります。まずは、会議中や電車の中など、貧乏ゆすりをしてしまう状況を把握してみましょう。
そして、貧乏ゆすりを始めたと感じたら、意識的に他の行動に切り替える練習をしてみます。たとえば軽く伸びをしたり、深呼吸をしたりするのがおすすめ。立ち上がって少し歩き、脚の血行を促すのも良いでしょう。
貧乏ゆすりがクセになっている場合、すぐに止めるのは難しいかもしれません。自分のクセを把握し、根気強く“切り替え”を続けることが大切です。
周囲の人がしている場合の対応

周りの方が貧乏ゆすりをしている音が気になって、不快に感じることもあるかもしれません。そんなときは直接的に声をかけるよりも、「ちょっと休憩しませんか?」などと声をかけて、一緒に立ち上がって気分転換をするのがおすすめ。これだけでも、貧乏ゆすりは止まることが多いです。
相手が親しい間柄でならば、「もしかして疲れてる?」など、相手を気遣う形で尋ねると、本人が貧乏ゆすりに気付くきっかけにつながることも。女性同士の場合、「私もたまにしちゃうんだけど、これってクセなのかな?」のように、自分の経験と重ねて話してみるのも言いやすい方法かもしれません。
「貧乏ゆすり」は必ずしも悪いものではない

「貧乏ゆすり」という名前を聞くと、あまり良いイメージを持たない方が多いかもしれません。しかし、貧乏ゆすりには血行促進やストレス軽減など、私たちの心身にとって嬉しい効果が期待できる側面もあります。
特に長時間座りっぱなしになりやすい現代では、貧乏ゆすりが健康維持に役立つ場合もあるのです。「ジグリング」という医学的な名称で、研究も進められています。
貧乏ゆすりを必ずしも“悪いクセ”と決めつけず、“体の自然な反応として起こるもの”と考えれば、少し見方が変わってくるかもしれませんね。
[ 監修者 ]

- みかわ整形外科クリニック
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