6タイプの特徴を解説!「漢方体質チェック」で自分に合う養生を|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」の田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、「漢方体質チェック」がテーマ。東洋医学の体質診断で自分の特徴を知り、日々の健康維持に役立てましょう。
当てはまるのはどれ?「漢方体質チェック」6タイプを解説
健康な体をつくる大事な要素である「気・血・水」。東洋医学では、気・血・水の過不足や症状のあらわれ方などによって体質を見極め、不調改善へアプローチしていきます。
体質は、大きく分けると6つ。タイプごとにくわしく解説しますので、まずは自分の体質をチェックしてみてください。
タイプは1つではなく、複数に当てはまる場合があります。チェックリストで一番多く当てはまったタイプが、あなたのメインの体質です。
例えば、「瘀血(おけつ)タイプ」のチェックリストで6個、「気滞(きたい)タイプ」のチェックリストで4個当てはまった場合、どちらもあなたの体質。主に、瘀血タイプの養生を取り入れつつ、気滞タイプの養生も参考にして過ごしてみましょう。
どのタイプにもまんべんなく当てはまる人は、気・血・水のいずれにも過不足があります。紹介する養生の中で、自分ができそうなものから取り入れていきましょう。
“気”が不足している「気虚(ききょ)タイプ」
気・血・水のうち、「気」が不足しているのが「気虚タイプ」。気は目に見えないエネルギーで、不足すると疲れやだるさを感じやすくなり、活力がない状態になります。
気は、ほかにも体を温める働きや、体を外的から守るバリアのような働きもあります。そのため、気虚タイプは常に体が冷えている、風邪をひきやすいなどの特徴も。
気は食べたものを消化吸収することで作られますが、気虚タイプは胃腸が弱い人が多く、胃の調子が悪い、食が細い、下痢しやすいなどのトラブルも起こります。
【気虚タイプ チェックリスト】
☐疲れやすい
☐疲れたときに不調が出る
☐やる気が出ない
☐風邪を引きやすい
☐胃腸が弱い
☐食欲が出ない
☐朝が苦手
☐息切れしやすい
☐冷え性
☐声に力がない
“気”が滞っている「気滞(きたい)タイプ」
本来、気はスムーズに体を巡ることで健康を保ちますが、停滞しているのが「気滞タイプ」。気の滞りで起こりやすいのが、メンタル不調。一番多いのがイライラで、そのほかに不安、落ち込み、マイナス思考など、情緒が不安定に。
滞りによって、東洋医学で「梅核気(ばいかくき)」と言われるのどが詰まった感じや、頭が痛い、胸や脇が張りやすいなど、体の各所で詰まりや張りが生じます。
それを追い出すために、おならやげっぷ、ため息が多くなるのも気滞タイプの特徴。便秘や下痢を繰り返しやすい、生理不順やPMS(月経前症候群)が起こるケースもあります。
家庭でも職場でも、いろんなことに配慮ができる女性は、その分メンタルに負担を感じることも多く、男性よりも気滞になりやすいと言えます。
【気滞タイプ チェックリスト】
□イライラしやすい
□気分が落ち込む、気分の浮き沈みがある
□ため息やおなら、げっぷが多い
□胸や腹部、脇などの張り感や痛みがある
□喉に何かがつまった感じがする(梅核気)
□食欲不振
□便秘や下痢を繰り返す
□片頭痛がある
□肌荒れやニキビが出やすい
□PMS(月経前症候群)がひどい
“血”が不足している「血虚(けっきょ)タイプ」
気・血・水のうち、「血」が不足しているのが「血虚タイプ」。血は、文字通り体を巡る血液のほか、全身に栄養を運ぶ、うるおす、精神を安定させるなどの働きもあります。
気・水とともに重要な働きを担う血が不足すると、貧血やめまい、立ちくらみが起こり、顔色は青白くつやが不足、髪の毛もパサつきやすくなります。
血は精神の安定にも関係するため、不眠や不安の症状もあらわれるのが特徴。眼精疲労やかすみ目、爪が割れやすい、物忘れ、会話が頭に入らないなども、血の不足によって起こります。
【血虚タイプ チェックリスト】
☐肌にツヤがない
☐爪が薄く割れやすい
☐目が疲れやすい
☐髪がバサバサしやすい
☐眠りが浅く、よく夢を見る
☐動悸がする
☐不安感がある
☐めまい・立ちくらみがよく起こる
☐月経期間中に、めまい、だるさ、集中できないなどの不調が起こりやすい
“血”が滞っている「瘀血(おけつ)タイプ」
気と同じく、たっぷりの血が体を巡っているのが理想ですが、停滞していて巡りが悪いのが「瘀血タイプ」です。血の巡りが悪くなると、“ドロドロ血”になり老廃物がたまりやすく、痛みや美容面のトラブルが起こりやすくなります。
瘀血タイプの特徴が、「1、痛みが出る」「2、しこりができる」「3、黒ずむ」の3つ。1は頭痛や生理痛、肩こりなど、2は子宮筋腫など、3は肌のシミや唇の色が悪いなどが代表的。
特に生理痛は、1~3日目までが激痛で耐えられない、という女性もいます。経血にどろっとした塊が出やすい、末端が常に冷えるのも瘀血タイプの特徴。
瘀血により熱の循環が悪くなり、心臓から遠い手足は冷え、頭はのぼせたようになる、冷えのぼせの症状も。また、シミやそばかす、目の下のクマなど、美容面のお悩みも増えます。
【瘀血タイプ チェックリスト】
□目の下のクマ、顔色のくすみ、シミが多い
□唇、爪の色が暗紫色もしくは青みがかっている
□ごつごつしたニキビ跡がある
□いつも同じ場所に刺すような痛みが続く(例えば下腹部など)、慢性的な頭痛
□肩こり、腰痛、関節痛がある
□生理痛がひどい
□生理不順
□しびれ、神経痛がある
□冷えのぼせ
□(夏でも)末端の手足が冷える
“水”が不足している「陰虚(いんきょ)タイプ」
気・血・水のうち、「水」が不足しているのが「陰虚タイプ」。水は、東洋医学で「津液(しんえき)」と言われ、体をうるおすほか、熱を冷ます冷却水としての働きもあります。
特に更年期世代は、うるおい不足によって陰虚になりやすく、のぼせやほてり、ホットフラッシュが起こりやすくなります。便秘、コロコロ便が出る、体の乾燥(肌・のど・目・鼻など)、かゆみなどの症状もあらわれるのも特徴。
水が足りないので寝ている間も体が熱くなり、大量の寝汗をかく人もいます。本来、更年期に向かうにつれて陰虚になっていきますが、睡眠不足などの生活習慣の乱れで気・血・水のバランスが崩れ、若い世代でも陰虚体質になる人が増えています。
【陰虚タイプ チェックリスト】
☐肌が乾燥しやすい
☐口の中が乾く
☐目が乾きやすい
☐冷たいものをよく飲む
☐顔や頭がのぼせやすい
☐手のひらや足の裏が温かい
☐夕方から夜にかけてほてり、微熱が出る
☐便秘しやすく、コロコロした便が出る
☐寝汗をよくかく
☐空咳が出て長引く
余分な“水”がたまっている「痰湿(たんしつ)タイプ」
水分代謝が滞り、体に余分な水分や汚れがたまっているのが「痰湿タイプ」。体の中が“ちゃぽちゃぽ”して、水はけが悪い状態です。
むくみや水太り、下痢、軟便になりやすく、口はネバネバして舌のコケも多い。いつも体がだるくて重い、雨の日や梅雨時期は特に体調が悪く、メンタルもすっきりしないのが特徴。
痰湿タイプは、甘い物や脂っこい食事、お酒など、おいしいものを食べたり飲んだりするのが大好き。わかっているけれど暴飲暴食がやめられない人も多いです。
【痰湿タイプ チェックリスト】
□体が重だるい、疲れやすい
□むくみがある
□めまい、頭痛がする
□吐き気、胃の不快感がある
□眠気が強い
□痰が出る(粘り気のある分泌物)
□軟便、下痢になりやすい
□おりものが増えた
□肥満気味で体脂肪率が高い
□ニキビや吹き出物が多い
「漢方体質チェック」6タイプ別 体質に合う養生法
自分の体質に合う養生を続けることが、不調を根本改善し、毎日を元気で過ごすためのポイントです。
病気ではないけれどなんとなくいつもつらい、毎月の生理前がしんどい、体調が万全な日が少ない……。そんな女性こそ、今日から養生を取り入れた暮らしを始めてみてください。
「気虚タイプ」の養生:無理をしないで徐々に体力をつける
気の不足は、携帯で言うと、常にバッテリーが30%くらいしかない状態で活動しているようなもの。携帯の充電と同じように、エネルギーのチャージが必要です。不足した気を補う一番効果的な方法は睡眠です。気虚タイプは、睡眠時間を削る生活は絶対にNG。
気が不足すると、さまざまな心身のバリア機能が低下。免疫の働きが低下するだけでなく、大きな音や他人のコソコソ話が気になるなど、良くない情報をキャッチしやすくなります。
そうならないために、睡眠や休息で気を補い、無理をしないことが大事。仕事や家事でも「これ以上やったら疲れるかも」と思ったら思い切ってやめます。運動を始めるのは、十分な睡眠で疲れがとれてから。激しい運動ではなく、ウォーキングからはじめて徐々に体力をつけていきましょう。
【気虚タイプにおすすめの食べ物】米類、豆類、芋類、かぼちゃ、とうもろこしなど

「気滞タイプ」の養生:自分時間をつくり、心と体をゆるめる
気滞タイプは、朝から夜までずっと気が張り詰めた状態なので、ゆるめることを意識しましょう。例えば、目をつぶって深呼吸する、ウォーキングやランニングなどで体を動かす、買い物で気分転換をする、料理に没頭するなど、何でもOK。
ポイントは、やってみて自分がすっきりする方法を選ぶこと。ストレスを避けることは難しいですが、自分がご機嫌でいられる方法を知っていれば、抱え込みすぎる前にこまめに発散でき、体調も安定します。イライラしたときは、好きな香りを嗅いで心を落ち着かせるのもおすすめです。
また、休みの日でもスケジュールをパンパンに詰め込んでしまうのが気滞タイプの特徴。休日はあえて予定を入れずに、“自分をゆるめる”時間にあててください。
【気滞タイプにおすすめの食べ物】セロリ、パクチー、シソ、三つ葉、グレープフルーツやみかんなどの柑橘類など
「血虚タイプ」の養生:睡眠で血を補い、目や頭を休ませる
気虚タイプと同じく、血虚タイプの最優先事項は睡眠です。不足した血は、眠ることで満たされます。いつも十分な睡眠時間をとることはもちろん、「今日は疲れたな……」と思ったらいつもより早めに眠って回復させましょう。
血が不足すると、考えもまとまりにくくなるので、判断力や集中力が必要な日の前日は、特にしっかり眠って体調を整えましょう。
同時に血虚タイプは、これ以上、血を減らさないことも重要。スマホやテレビ、パソコンの使いすぎで目を酷使しすぎたり、仕事のしすぎや考え事のしすぎで頭を使いすぎると、血は消耗してしまいます。ダラダラとスマホを見ながら夜更かしするのは避けて、なるべく使用時間を減らしていきましょう。
【血虚タイプにおすすめの食べ物】にんじん、ほうれん草、イカ、タコ、レバー、ぶどう、イチゴなどのベリー類など
「瘀血タイプ」の養生:体を冷やさず、動かして巡りアップ
血の巡りが悪い瘀血タイプは、日常生活の中で長時間同じ姿勢が続かないように気を付けましょう。例えば、デスクワークが多い人は、1時間に1回は立ちあがってストレッチをしたり、室内を歩いたりするのもおすすめ。
じっとしているとどんどん血がドロドロになるので、休日はベッドの上でゴロゴロして過ごすのではなく、外に出て活動を。
瘀血タイプは、体の冷えにも気を付けたいところ。首・手首・足首・くびれ(お腹)の“4くび”を冷やさないよう、マフラー、アーム&レッグウォーマー、腹巻きなどを活用して温めます。
食事の不摂生も、瘀血を悪化させます。できるだけ脂っこいものや冷たいものを避けた食事で養生しましょう。
【瘀血タイプにおすすめの食べ物】イワシやサンマなどの青魚、玉ねぎ、らっきょう、桃、お酢など

「陰虚タイプ」の養生:ぐっすり眠って汗をかく習慣は控えめに
気虚・血虚タイプと同じく、陰虚タイプも体調の安定のために最も大切なのが睡眠です。質、量ともに十分な睡眠がとれてこそ、体がうるおいます。
仕事や家事、趣味の時間などで、睡眠を削ってしまいがちな人は、10分でも良いので早く布団に入ることを心がけてください。
また、陰虚タイプは水が不足しているので、汗をかく健康法は逆効果。サウナや岩盤浴、長時間の半身浴はやめましょう。激しく汗をかく運動も控えたほうが安心です。こまめな水分補給も忘れずに。
【陰虚タイプにおすすめの食べ物】梨、ぶどう、いちご、豆腐、白ごま、豚肉、玉子、牡蠣など
「痰湿タイプ」の養生:体を動かして汗をかき、食事を見直す
「痰湿」は、体にたまった余分な水分や汚れのこと。たまった痰湿を追い出すために、ウォーキングやジョギングなどで体を動かす、半身浴でじんわりと体温を上げるなど、汗をかく習慣を取り入れてみましょう。運動が嫌いな人は、まずはお風呂からでもOKです。
痰湿タイプの体質改善には、食生活の見直しが重要。暴飲暴食が続けば痰湿が蓄積して不調につながります。
そのため、甘いもの、揚げ物の食べ過ぎ、アルコールの飲み過ぎを、少しずつ減らしていきましょう。週3回食べていたところを、週1回にするなど、できる範囲で養生を続けていけば、体調も変わってくるはずです。
【痰湿タイプにおすすめの食べ物】緑豆もやし、春菊、たけのこ、わかめ、昆布、里芋など
今月の養生ポイント:体質を知ると人生がもっとラクになる
若い頃は、体力や気力で忙しさを乗り切れたと思います。でも30代を過ぎると、体調を崩しやすくなって、なかなか調子が戻らなかったり、不調が積み重なったりと、「昔より無理がきかなくなった」と感じることはありませんか。
そんなときに健康管理に役立つのが、自分の体質を知ること。起こりやすい不調や特徴を分かっていれば、事前にブレーキをかけて予防できたり、養生を心がけて忙しい時期を乗り切れたりします。
体質を知ったうえで養生を続けると、体調が良い状態が続くので、心も体も今よりラクになります。自分自身との付き合い方が上手になり、人生がもっと過ごしやすくなるはずです。
また、パートナーや家族、職場の上司や同僚など、周りの人の体質をチェックしてみるのもおすすめです。周りの人の体質や特徴が分かると、人にやさしくなれたり、考え方が柔軟になったりと、人間関係が円滑になります。
漢方体質チェックと自分に合う養生で、年齢を重ねても心身ともに健康な毎日を過ごしましょう!
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ

















