かゆくて眠れない、なかなか消えない「慢性特発性蕁麻疹」を正しく治そう
かゆくて眠れない、なかなか消えない蕁麻疹は慢性特発性蕁麻疹の可能性も。40代女性に多いこの病気の特徴と、正しい治療法・受診のポイントを解説します。
疲れやストレスで悪化?40代女性に多い原因不明のかゆみ

突然、肌がムズムズとかゆくなる。
見るとかゆみの元は皮膚にできた赤いふくらみ。しばらくすると跡形もなく消えるけれど、また同じ日または数日後には場所を変えて同じような症状が出る──心当たりはありませんか?
これは「慢性特発性蕁麻疹(まんせいとくはつせいじんましん)という皮膚疾患の可能性があります。「特発性」は「突発性」とは違い、原因が特定できないという意味です。また、出ては消え、消えては現れるという症状が6週間以上続くのが特徴です。
名前の通り、身体の外部からの明確な原因が特定できないのが特徴で、疲労やストレスで悪化しやすいことが知られています。発症は女性に多く、40代がピーク。ホルモンバランスの変化が重なる年代でもあります。
サノフィ社の調査(※)によると、慢性特発性蕁麻疹の患者さんの約9割が「眠れないほどのかゆみ」や「いつまで続くかわからない不安」を抱えており、日常生活への影響は小さくありません。
※「慢性特発性蕁麻疹の治療実態調査」2025年
「湿疹」との違いと見分け方
かゆみを伴う皮膚トラブルといえば、「湿疹」や「アトピー」を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、蕁麻疹と湿疹は異なる病気です。
湿疹は皮膚に炎症が長く続き、カサカサやじくじくが残ることが多い病気です。一方、蕁麻疹は、かゆみを伴う赤いふくらみ(膨疹)が急に出て、数時間以内に消えるのが特徴です。また、蕁麻疹の中の約6割が慢性特発性蕁麻疹でもっとも多い蕁麻疹の1病型となります。
「夕方から夜にかけてかゆみが強くなる」「出たり消えたりをくり返す」──こうした特徴がある場合は、慢性特発性蕁麻疹の可能性があります。
| 症状 | 継続時間 | 特徴 |
| 湿疹(皮膚炎) | 数日〜数週間続く | カサつき、水ぶくれ、かき壊し |
| 慢性特発性蕁麻疹 | 6週間以上くり返す | 原因不明、夜に悪化しやすい、女性に多い |
夜になると悪化する理由

慢性特発性蕁麻疹の患者さんの多くが「夜になるとかゆみが強くなる」と訴えます。
これは、夜に体温が上がって血流が増えることや体内の炎症を抑えるホルモンがへることで、ヒスタミンというかゆみ物質が放出されやすくなるため。
また、仕事や家事など昼間の緊張がほぐれ、かゆみを意識しやすくなることも関係しています。
さらに、疲労やストレスによって自律神経のバランスが崩れると、蕁麻疹の症状が悪化しやすくなることもわかっています。
つまり、原因がはっきりしないまま、「疲れた夜」に症状が強く出る。これが慢性特発性蕁麻疹の特徴のひとつなのです。
治療の基本は「かゆみを抑えながら普通の生活を」
慢性特発性蕁麻疹の治療は、抗ヒスタミン薬を中心に行われます。
多くの方は、この薬を服用することでかゆみを抑え、日常生活を送れるようになります。
ただし、中には薬を飲んでも十分に症状が改善しない人もいます。
そのような場合、近年は「分子標的薬(生物学的製剤)」と呼ばれる新しいタイプの治療薬も選択肢に加わっています。
これは、免疫の働きの一部をピンポイントで調整し、蕁麻疹の原因となる炎症反応を抑える薬です。
こうした治療法の進歩により、「薬を飲んでも治らない」「ずっとくり返している」といった悩みを抱える方にも、改善の可能性が広がっています。
ひとりで悩まず、皮膚科へ

サノフィ社が行った先の調査(※)では、慢性特発性蕁麻疹の患者さんの約95%が「治療で完治を目指せる病気」と思っていないことがわかりました。半数以上の方が「いつまで続くのか分からない大変な病気」、約半数の方が「かゆみがつらい大変な病気」と答えています。
※「慢性特発性蕁麻疹の治療実態調査」2025年
しかし、症状が長く続く、眠れないほどかゆい、疲れやストレスで悪化する――そんなときは我慢せずに皮膚科を受診するのがおすすめです。
Webサイト「特発性じんましん(CSU)の治療ガイド」では全国の蕁麻疹の相談ができる医療機関が検索できます。
受診する時間帯には症状が見えないことが多いため、症状が出たときにスマホなどで写真を撮っておき、医師に説明すると診察がスムーズです。
適切な治療で症状を抑え、ぐっすり眠れる夜を取り戻しましょう。
[ 監修者 ]




















