
女性に多い低血圧の悩みを改善|気象病ドクターの“今日もいい元気”
気象病ドクター・久手堅司先生による連載。今回は、気圧の変化と低血圧が原因で起こる、全身のだるさや立ちくらみの対処法をご紹介。シャキッと目覚めて元気に1日をスタートさせよう!
目次
気圧が下がると血圧も下がる
気圧が上がったり下がったりすることで、体が影響を受けて起こるさまざまな体調不良を「気象病」と言います。
雨が降る前の曇りの状態では気圧が大きく下がります。すると、外気が血管を押す力が弱くなり、血圧も下がります。低血圧の症状は、寝起きが悪い、めまい、立ちくらみ、倦怠感・疲労感、肩コリ、動悸、息切れなど、多岐にわたります。
日頃から低血圧気味で不調がある人は、気圧が下がることでさらに血圧が下がって症状が悪化し、日常生活に影響を及ぼす場合があります。
天気の悪化で気象病と低血圧の症状が深刻化

梅雨シーズンや台風の時期は、気圧とともに血圧が下がることで朝なかなか起き上がれない、突然のめまいなど、症状が悪化しやすくなるので特に注意が必要です。
WHO(世界保健機構)の基準として、女性では、収縮期の血圧が100mmHg以下、拡張期の血圧は60mmHg以下を低血圧としています。
全身に血液を送る力が弱くなる低血圧は、男性に比べて筋力が不足しがちな女性に多く、特にふくらはぎなどの下半身の筋力が弱いと、心臓への血液の戻りが悪くなってしまい、血圧が低下する可能性があります。
高血圧ほど重要視されていませんが、低血圧を放っておくと血流不足により全身に十分な酸素や栄養が行き渡らなくなり、自律神経にバンランスも崩しやすくなったり、不調の原因になったりすることもあります。
【低血圧症状のチェックリスト】
□ 朝起きるのが苦手である
□ 全身倦怠感がある
□ 立ちくらみ、めまい。ひどくなると失神する
□ 立っていると気持ちが悪くなる。動悸や息切れが起こる
□ 入浴後に体調不良になりやすい
□ 顔色が悪い、青白い。貧血がある
□ 食欲不振や胃もたれ、腹痛、食後に体調が悪くなりやすい
□ 頭痛、首コリ、肩コリがある。横になっている場合は出にくい
□ 精神的ストレスで体調不良になりやすい
□ 気象変化に弱い。乗り物酔いをしやすい
健康診断で血圧が低いと指摘されたことがある人は、当てはまる項目が多かったのではないでしょうか?
低血圧は生活の質が落ちるだけでなく血液の循環が悪くなり、長期的には心臓に負担がかかるリスクがあります。症状が続く場合は医療機関を受診し、適切な対策を講じて症状を予防・改善しましょう。
女性は“隠れ貧血”にも注意
生理のある女性は貧血になりやすく、鉄不足による「鉄欠乏性貧血」を発症している人が多くいます。
鉄は、赤血球に含まれる「ヘモグロビン」を作るのに欠かせない材料。ヘモグロビンは、酸素と結合して全身に運ぶ働きがありますが、ヘモグロビンが作れなくなることで体中が酸欠状態になり、疲労感やめまい、立ちくらみ、息切れなど、低血圧と似たような症状が起こることがあります。
成人女性では、血液中に含まれるヘモグロビン(Hb /血色素量)の量が12g/dl以下の場合ば、貧血の可能性があります。気象病や低血圧だけでなく、貧血による不調の可能性もありますので、“隠れ貧血”に気をつけましょう。
健康診断の結果をしっかり把握することも、今ある不調の原因を突き止める手がかりになります。
低血圧は10~40代の女性に多い
血圧は年齢とも関係があり、更年期になると、血圧が上がりやすい傾向があります。低血圧が多いのは10~40代。気象病と低血圧の両方の症状を抱えていることも少なくありません。気圧が低い日に体調が悪化し、受診するケースもあります。

【実録】低血圧の症状が軽くなり、元気復活!
デスクワークが多く運動不足、虚弱体質の20代女性。日頃不調が出やすく不眠の悩みもあり、曇りの日は、起きるのがつらく会社に行けない日が増え、受診することに。「低血圧症状のチェックリスト」にも多数該当し、血流が悪くむくみが起きやすい状態となっていました。
むくみやめまいの治療に使用される「五苓散(ごれいさん)」などの漢方薬を使いながら、水分をこまめにとる、急に立ち上がらないようにするといったセルフケアで徐々に体調が回復。
太陽の光を浴び、日中しっかり活動できるようになると自然と食欲が回復し、行動するためのエネルギーが高まります。また、寝つき・寝起きも良くなり、生活リズムが整って仕事も順調に。血色の良い健康的な顔色に変わりました。
ちょっとの工夫で低血圧を改善
低血圧の人は気象の変化に影響を受けやすい傾向があります。生活リズムを見直すことで、血圧が低いなかでも不調が出にくく、元気に過ごすことができます。血流を良くし、自律神経に働きかける3つの工夫をご紹介。

1.着圧ソックスを履く
足の疲れやむくみを軽減できる着圧ソックスは、脚の筋力不足による低血圧、めまいや立ちくらみの予防や改善にも効果的。着圧ソックスを履くことでふくらはぎの筋肉が適度に圧迫されて血圧が上がり、全身の血流が良くなります。手軽さと即効性の高さもメリット。
2.水分と塩分を補給
脱水状態になると血液の量が減り、血圧が下がってふらつき、めまいなどが起こることがあります。こまめな水分補給を心がけて。また、1日に20~30gを目安に塩分を取ることで血圧は上がりやすくなります。みそ汁は食事で水分と塩分を同時に摂取できるのでおすすめです。
3.好きな音楽を聴く
邦楽やクラシック、ジャズetc.何でも、好きなジャンルで構いません。低血圧の人は、音楽を聴くことで交感神経の働きが強くなり、血圧や心拍数が上昇。血流が改善して体調が良くなる可能性があります。さらに、気分の不調が改善するという研究報告もあります。
他にも、生体内のリズムを整えるために日光を15分ほど浴びる、ウォーキングやストレッチ、ラジオ体操など簡単に取り組むことができて継続しやすい全身運動もおすすめです。
「体調の良い日」のルーティンを見つけて

朝が弱い、午前中は仕事がはかどらない、だるいといった低血圧の悩みは分かってもらえないことも多く、怠け者と思われてしまうことがあります。
血圧の測定やセルフチェックを行って、低血圧であるという認識を持つことは改善に向けての第一歩。気象病のケアをすると気圧の変動に対する不調は軽くなります。逆に、低血圧の治療や対処をすることで低気圧のときの不調を軽減することもできます。
適度に体を動かしたり、食事内容を見直したりして、体調が良いと思うタイミングを見つけましょう。仕事もプライベートも活力のある毎日を送れますよ!
イラスト/Aikoberry

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