
生理前がつらすぎる…「PMS」の原因と東洋医学的セルフケア|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、「PMS(月経前症候群)」がテーマ。生理前の心身の不調を和らげる東洋医学のセルフケアを紹介します。
目次
「PMS(月経前症候群)」の症状は200種類以上にのぼる
生理前になると、イライラしたり涙が出たりして情緒が不安定になる。胸や下腹部が張る、過度な眠気や不眠がつらい、疲れる…。そんな生理前の心と体にあらわれる症状を「PMS(月経前症候群)」といいます。
PMSの症状は200種類以上ともいわれ、人によってあらわれる不調や時期はさまざま。症状の強さも異なります。
東洋医学では、生理・妊娠・出産・更年期など、女性ホルモンの変動で起こる精神的・肉体的な不調を「血の道症(ちのみちしょう)」といい、PMSもその一つです。
PMSは、五臓六腑のうち「肝」が大きく関係しています。「肝」の働きは二つあり、一つは“血のタンク”ともいわれ、血を貯蔵する倉庫のような働き。二つ目は、自律神経のバランスを整え、気(エネルギー)の巡りを調節する働きがあります。
「PMS(月経前症候群)」の原因は?
PMSの原因は、肝の血の不足と気の滞りです。日頃からストレスがたまっている、目や頭を使いすぎていると血が不足して肝の働きが悪くなり、気滞(きたい)といわれる気の巡りが悪くなった状態に。
すると、体に気や血がうまく行き渡らなくなり、生理前になるとイライラや胸の張り、過食、便秘、眠気、頭痛など心身に不調が起こりやすくなります。
肝はストレスの影響を受けやすく、体調が悪くても無理してがんばりすぎていると、ますます血が不足。その結果、落ち込みや、不安感、めまい、動悸など、血の不足によって起こる症状があらわれます。
そして生理が来ると、さらに血が不足…。東洋医学的にみても、女性にとって生理前から生理期間中は、体調不良が起こりやすい状態にあるといえます。
「PMS(月経前症候群)」を和らげる東洋医学のセルフケア
PMSのせいで仕事や家事が手に付かないなど、生活に支障が出ている場合は、まずは婦人科の受診を。大きな病気がないかを確認してもらうと安心です。
PMSの改善には漢方薬も有効ですので、漢方薬局での相談もおすすめです。セルフケアで症状を和らげるには、肝の血を補い、気の巡りをよくする生活を心がけましょう。食事や生活習慣のコツ、ツボ押しを紹介します。

【食養生】肝の血を補う、気の巡りをよくする食べ物を
PMS改善に効果的なのは、肝の血を補う赤い食べ物や黒い食べ物、気の巡りをよくする香りのいい食べ物。これらを積極的に食事に取り入れてみてください。
【肝の血を補う食べ物】
赤い食べ物…クコの実、イチゴ・桑の実(マルベリー)などの色の濃いベリー類など
黒い食べ物…黒豆、黒ゴマ、黒きくらげ、牡蠣など
そのほか、肝の血を補う食べ物…レバー、ほうれん草・小松菜などの緑黄色野菜
【気の巡りをよくする食べ物・飲み物】
みかん・きんかん・グレープフルーツなどの柑橘類、ミント、三つ葉、セロリ、ジャスミン茶、ハーブティーなど、香りのよい食べ物・飲み物
【生活習慣】ストレスをためず、今日のうちに寝る
食べ物だけでなく生活習慣の改善でも、血を補い、気を巡らせることができます。例えば、ストレスをためすぎずこまめに発散する、夜更かしはせずにその日のうちに寝る、予定を詰め込みすぎないなど、心と体を労わった生活を送ってください。
また、体の横側には気の巡りにかかわる経絡(けいらく・エネルギーの通り道)が通っています。そのため側頭部をもんでマッサージする、体側を伸ばしてストレッチすることも、気を巡らせます。
日頃の小さな不調が生理前に強くなることがあるので、体調が悪いときは特に無理せず過ごすことが養生につながります。

【ツボ押し】「PMS(月経前症候群)」を和らげるツボ
滞った気の流れをスムーズにするのに、ツボ押しも効果的です。PMSがつらい日はもちろん、体調が安定しているときから予防としてツボ押しを習慣にしてもOK!

太衝(たいしょう):足の甲の親指と人差し指の骨の間を上に向けて指を滑らせ、指が骨と当たって止まるところのへこんだ場所。
押し方:親指の腹を当てて、ズーンと響く強さで押します。

期門(きもん):第6肋骨と第7肋骨の間で、乳頭から指4~5本分下の位置。
押し方:脇腹に手を置いて、ツボのあたりを両手でゆらします。
今月の養生ポイント:PMSがつらいなら、まずやるべきはストレスケア
漢方薬局でPMSの症状がある女性のお話を聞いていると、日頃のストレスが毎月の症状に影響しているように感じます。例えば、仕事が忙しくて夫婦関係もギスギスしていると、翌月はPMSも生理も重い…。反対に、ストレスが少なくゆったり過ごせると「今月はそんなにひどくなかった」とおっしゃる女性もいます。
「気滞(気の滞り)」はPMSの悪化につながります。対処法はいろいろありますが、一番重要視して欲しいのがストレスケア。たまったストレスを発散することも大事ですが、それよりも日頃から気を滞らせない生活を送り、ストレスをためないことがポイントです。
気を滞らせないための方法は、散歩やヨガ、ストレッチなどの軽く体を動かす習慣、カラオケや買い物、友人と話すなど、何でもOK。ただし、体を動かすのが嫌いな人が、無理してヨガを選ぶとそれがストレスになり気滞につながります。自分の好きな方法を選びましょう。
PMSで体調が悪く動けない日もあると思います。そんなときでも頭をもんだり、体側を伸ばしたりして、少しでも気を巡らせるセルフケアを取り入れてみましょう。
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ