ダラダラ汗、ストレス汗…。3つの「汗タイプ」別 夏にやるべき養生|田中友也さん 季節の養生法
神戸にある漢方相談薬局「CoCo美漢方」田中友也さんが、“季節の養生法”をお届けする連載。今月は、「汗」がテーマ。3つの汗タイプ別に、夏を元気に乗り切るためのセルフケアをご紹介します。
目次
ダラダラ汗、寝汗、ストレス汗…体質別3つの「汗タイプ」を解説
夏になると不快に感じるのが、大量の汗。汗の重要な役割は、体温調節です。暑ければ汗をかく、涼しければ汗が止まる。これが正常ですが、必要以上にダラダラと汗をかいて止まらない人や、わきや手など部分的に汗が大量に出る人など、正しく汗をかけない人も少なくありません。
そのため、体温調節がうまくいかず、熱中症や夏バテ、クーラー病など、夏の体調不良につながりやすいのです。今回は、東洋医学の視点で、体質別に3つの汗タイプを解説。まずは、当てはまる汗タイプを確認しましょう。
(1)元気不足の「ダラダラ汗タイプ」
1つ目は、必要以上に汗が出て止まらない「ダラダラ汗タイプ」です。全身からダラダラと汗が出てきて、タオルで拭いてもずっと止まらない人は、このタイプ。原因は、「気=エネルギー」の不足。「気」の中でも「元気」が足りない状態です。
体の「元気」には、固摂(こせつ)作用といってエネルギーである気や必要な水分が体から漏れ出ないように引き締める働きがあります。しかし、元気不足になると、固摂作用が弱くなり、エネルギーや水分が汗となってダラダラ溢れてしまうのです。
汗は、元気と、体の水分である津液(しんえき)でできているため、汗をかくほどますます元気が不足。気・血・水のバランスが崩れて、疲労感が強くなります。その結果、さらにダラダラ汗が止まらなくなり、余計に疲れるという悪循環に陥ります。
疲れやすい、風邪をひきやすい、顔色が悪い、胃腸が弱いなども、ダラダラ汗タイプの特徴です。
(2)うるおい不足の「ぐっしょり寝汗タイプ」
2つ目は、寝ているときの汗が多い「ぐっしょり寝汗タイプ」。寝汗がひどい人、朝起きると汗で体がベタッとしている人は、このタイプに当てはまります。原因は、体のうるおい不足。水が足りないので体が熱っぽくなり、その熱を外に出すためにたくさん寝汗をかきます。
ほてりやすくて微熱っぽい、寝るときに手足が涼しくないと寝られないなど、体の熱を感じやすいのが特徴です。更年期世代で、寝汗が気になる人もこのタイプです。
また、生理前後や出産前後、慢性的に睡眠不足が続いている人も、うるおいが不足しやすくなります。
(3)気の巡りが悪い「ストレス汗タイプ」
3つ目は、緊張すると汗をかきやすい「ストレス汗タイプ」。仕事やプライベートでプレッシャーがかかるときに、わきや手のひらなど、部分的に大量の汗をかくのが、このタイプです。ベタベタして、においやすいのもストレス汗の特徴。
原因は、過剰なストレスによる気の滞りです。気の巡りが悪化することで、体に余分な熱が発生し、不快な汗をかくのです。
さらに、ストレスは胃腸に負担をかけます。胃腸は、栄養や水分を全身に運ぶ働きがありますが、それが弱くなると水の代謝機能がダウン。そのため、水分をうまく運べずに、全身ではなく部分的に大量の汗をかいてしまいます。
ストレスや緊張に弱い人、気持ちの焦りが強い人、口臭が強い人、不眠や動悸といった症状がある人も、ストレス汗タイプに当てはまります。
汗タイプ別 夏を健康に過ごすための食養生とアドバイス
良い汗をかけるということは、体温を適切に調整できるということ。そのため汗は、暑い夏を健康に過ごすためのカギになります。
ご紹介した3つの汗タイプ別に、食養生や生活習慣のポイントをまとめました。夏の体調管理の参考にしてみてください。体質が改善すると、自然と汗のかき方も変わってきます。
ダラダラ汗タイプ:疲れをためずに食事をおろそかにしない
ダラダラ汗タイプは、元気不足が原因。予定を詰め込みすぎて、忙しい毎日を送ると、疲れて元気を消耗します。仕事や家事、プライベートで“バタバタする”ことをやめて、意識的に休む時間を持つと、ダラダラ汗が改善するでしょう。
元気が不足しているので、食事がおろそかになると夏バテしやすくなります。しっかり食べて食べ物から元気をチャージしましょう。
ダラダラ汗タイプにおすすめの食べ物…山芋、にんじん、なつめ、桃、りんごなど、元気を補うもの、ぎんなん、蓮の実、梅など、渋味や酸味のあるもの
ぐっしょり寝汗タイプ:ぐっすり眠ってうるおいを補う
ぐしょり寝汗タイプに大事なのは、睡眠時間。体のうるおいは、睡眠によって補われます。慢性的に睡眠時間が不足していて、寝汗で悩んでいる人は、少しでも早く寝ることを心がけましょう。寝つきが悪い場合は、シャワーだけで済ませずに、ぬるめのお風呂にゆっくり浸かってリラックスすると、入眠しやすくなります。
また、夏に食べたくなる激辛料理はNG。体を温めて、ますますうるおいが不足します。
ぐっしょり寝汗タイプにおすすめの食べ物…白きくらげ、ほたて、オクラ、桑の実、牡蠣、ヨーグルト、チーズなど、体をうるおすもの
ストレス汗タイプ:運動や趣味の時間を持ち、気を巡らせる
ストレス汗タイプにおすすめなのは、体を動かすこと。適度な運動は気の巡りをスムーズにして、気・血・水のバランスを整えます。涼しい時間帯のウォーキングなどで全身を動かすと、心もすっきりしてメンタルにもいい影響があります。
次第に、部分的にドバっとかく汗ではなく、全身で良い汗をかけるように変わってくるはずです。
自分の好きな趣味で“オフ”の時間をつくることも大事。緊張から心身を解放させて、リラックスしましょう。
ストレス汗タイプにおすすめの食べ物…しそ、かんきつ類(かぼす、グレープフルーツ、みかんなど)、ジャスミン茶、緑茶など、香りの良いもの
汗対策に効果的なツボ「屋翳(おくえい)」「大包(だいほう)」
ここまで3タイプ別の食養生と生活のポイントをご紹介しました。「ダラダラ出ている汗を今すぐなんとかしたい」というときは、ツボ押しが効果的です。
顔やわき汗など、上半身の汗に効く「屋翳(おくえい)」「大包(だいほう)」の2つのツボを覚えておきましょう。
屋翳(おくえい):乳首から上へ移動。鎖骨と乳頭の中間よりやや上の位置が目安。
大包(だいほう):わきから指幅4~5本程度下で、ろっ骨と交わる位置。
押し方:体の前で腕を交差し、親指を「屋翳」にあて、ほかの指はわきの下に。胸の横を軽くつかむようにして、両方のツボを一度に刺激します。
今月の養生ポイント:夏の健康管理は汗を参考に
東洋医学では、「汗血同源(かんけつどうげん)」という言葉があります。これは、汗も血も同じ津液(体の水分)が源で、支え合っていることをあらわしています。
汗を適度にかくことは良いことですが、過剰に汗をかきすぎると血を消耗して、疲労が強くなったり、貧血気味になったりと、体調不良につながりやすくなります。夏にフラフラ、クラクラするという人は、汗のかきすぎが関係しているかもしれません。
また、汗をかきすぎて体のうるおいが不足すると、血がドロドロになります。発汗により気も不足すると、血を押し出すエネルギーが弱くなるので、ますます巡りが停滞。そのため、血管内で血の塊ができやすくなる可能性もあり、体のうるおい不足には十分注意したいものです。
夏は、適度に水分を補給しながら、上手に汗をかけるように体質改善をしていくことが大切。自分の汗の状態を、夏の健康管理に役立ててみましょう。
取材・文/釼持陽子 イラスト/植松しんこ
[ 監修者 ]