
『アイアン・ジャイアント』|キュン死に一生アニメ第6回
食事や運動だけでなく心にも栄養を! ストレス発散必至の涙腺崩壊アニメをご紹介するこのコーナー。第6回は、宇宙の迷子となってしまった巨大ロボットと少年の友情を描いた名作『アイアン・ジャイアント』です。
名匠ブラッド・バードの初監督作品
公開は1999年(日本では2000年)。『Mr.インクレディブル』『レミーのおいしいレストラン』で、アカデミー賞の長編アニメーション部門を受賞した名匠ブラッド・バードの初監督作品です。
物語の舞台は、アメリカのメイン州にある海沿いの小さな町=ロックウェル。時代は米ソ冷戦さなかの1957年です。
主人公である9歳の少年、ホーガース・ヒューズはこの町で母親のアニーと暮らしています。ホーガースは、父親がいないことなど感じさせない元気でやんちゃ、学校では飛び級するくらい明晰な頭脳を持った少年です。
ある日、母親の働くダイナーに顔を出したホーガースは、地元の漁師たちの話を耳にします。
「ウソじゃないって。あれは宇宙から来たんだ」
そう語るのは年老いたひとりの漁師。彼は荒れた海で遭難した際、灯台と見間違えるような強い光を放つ巨大ななにかを目にしたのです。
「一直線に陸に向かってた。政府には通報済みだ。ありゃスプートニク(ソ連が打ち上げた世界初の人工衛星)か火星人だよ。そうさ、火星の侵略者だよ」

この話に、好奇心旺盛なホーガースは目を輝かせます。が、力説する漁師に仲間たちは、「未確認なのはお前が飲んだ酒の量だろ」と笑ってとりあいません。
そのなかで、唯一、「おれも見たぜ」と言ったのは、隣のテーブルにいた客=ディーンでした。けれど彼もホーガースが、「ボクは信じるよ。調査しようよ」と誘うと、「悪いな。実は見てないんだ。(老漁師を)かばっただけさ」と少年をがっかりさせます。
その晩、アニーが残業で帰りが遅くなるのをいいことに夜更かししたホーガースは、調子の悪くなったテレビのアンテナを確認しようと家の屋根に上ります。彼の目に映ったのは、破損したアンテナと家の敷地から裏の森へとつづく巨大な足跡でした。
「火星からの侵略者?」
こうなると好奇心の塊である少年をとめることはできません。ホーガースは暗い森のなかへと入って行くのでした。

森で出会った鋼鉄の巨人=ジャイアント
森でホーガースが見つけたもの。それは高さが15メートルはあろうかという鋼鉄のロボット=ジャイアントでした。彼は、自分がどこから来たのか、記憶を失っていました。
始まったホーガースとロボット=ジャイアントの交流。小さな子どものように無垢なジャイアントは少年から言葉を学んでいきます。そんなジャイアントにホーガースは自分の好きなスーパーマンのコミックを見せます。
「これは『スーパーマン』。今は有名だけど最初は君と同じだった。地球に不時着して困ってたんだ。でも彼は正義のためにしかパワーを使わない」
ホーガースの話に、ジャイアントは自分とスーパーマンを重ね合わせるのでした。

ホーガースとジャイアントが友情を深めていくいっぽうで、町には政府の捜査官であるケント・マンズリーがやって来ます。マンズリーは、ジャイアントの痕跡を辿るうちにホーガースに疑いの目を向けるようになります。
必死になってマンズリーの目からジャイアントを隠そうとするホーガース。しかし、執念深いマンズリーは追跡の手をゆるめません。
「なりたい自分」になる
少年と未知の存在が出会い、友情が芽生える。本作を名作たらしめているもの。それはシンプルなストーリーとそこに込められたメッセージに他なりません。
巨大なジャイアントは、ホーガースにとって人生ではじめて出会った守るべき無垢な存在です。
学校では飛び級先のクラスでイジメっ子たちにガリ勉扱いされて苦労しているホーガース。そんな彼に、集めたスクラップでアート作品を創っている芸術家のディーンはこう語りかけます。
「他人がどう思おうと関係ないだろ。自分を決めるのは自分自身だ。自分のなりたい自分になればいい」
「なりたい自分」とはなにか。ジャイアントもまた、「なりたい自分」になろうとします。その健気な姿は観る者の胸に感動を呼びます。

アニメーション界のアカデミー賞と位置付けられているアニー賞で、最優秀作品賞をはじめ9つの賞に輝いた本作。2016年には映画公開時にはカットされていた重要な2つのシーンを加えたシグネチャー・エディション(完全版)のBlu-rayが発売されました。初めて観るという人はもちろん、以前に観たという人も、リマスターされた本作をお楽しみください。
〈Information〉

アイアン・ジャイアント
デジタル配信中
ブルーレイ(シグネチャー・エディション) 2,619円(税込)
DVD(劇場公開版) 1,572円(税込)
発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
詳細は公式サイトへ
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